112F72

次の文を読み、72〜74の問いに答えよ。

76歳の男性。腹痛と下痢とを主訴に来院した。

現病歴:50歳台から軟便傾向であり、ときに水様下痢となっていた。本日、早朝に下痢、腹痛が出現した。自宅近くの診療所を受診し、細胞外液の輸液を受けたが改善しないため、紹介されて受診した。血便や嘔吐はない。

既往歴:55歳ごろに過敏性腸症候群と診断され、6か月間治療を受けたことがある。65歳時から高血圧症と脂質異常症のため、自宅近くの診療所でスタチンとカルシウム拮抗薬とを処方されている。75歳時からAlzheimer型認知症のためドネぺジル塩酸塩を処方されている。

家族歴:父親が胃癌。母親が脳卒中。

生活歴:商社に勤務し、48歳から60歳まで東南アジア諸国に赴任していた。

現 症:意識は清明。身長173cm、体重66kg。体温37.1℃。脈拍88/分、整。血圧120/60mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98 % (room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は下腹部全体に圧痛があるが、反跳痛はない。肝・脾を触知しない。腸雑音は亢進している。

検査所見:尿所見:蛋白1+、糖(―)、ケトン体3+、潜血(―)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球497万、Hb 14.9g/dL、Ht 44%、白血球11,700(好中球77%、好酸球4%、単球6%、リンパ球13%)、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.3g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST 8U/L、ALT 10U/L、LD 156U/L(基準176〜353)、ALP 147U/L(基準115〜359)、γ-GTP 25U/L(基準8〜50)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、尿酸5.9mg/dL、血糖101mg/dL、HbA1c 5.4%(基準4.6〜6.2)、トリグリセリド85mg/dL、HDLコレステロール54mg/dL、LDLコレステロール116mg/dL、Na 139mEq/L、K 3.3mEq/L、Cl 103mEq/L。便鏡検によって認めた微生物の写真を別に示す。

原因微生物はどれか。

赤痢アメーバ
病原性大腸菌
ランブル鞭毛虫
C.difficile
Campylobacter jejunii

解答: c

112F72の解説

高齢男性の腹痛と下痢。55歳ころから診断されていた過敏性腸症候群〈IBS〉と主訴は類似するが、今回のエピソードはそれで説明がつくのか、はたまた異なる病態なのか。尿中ケトン体陽性、白血球上昇、といった検査数値からはIBSだけでは説明がつかなそうだ、と判断したい。画像では洋ナシ状の虫体が指摘でき、ランブル鞭毛虫症の診断となる。
a・b 血便をみることが多い。
c 正しい。上記の通り。
d 偽膜性腸炎の原因菌として有名。抗菌薬内服歴等なく、考えにくい。
e 焼肉等による食中毒の原因菌として有名。外食エピソードの記載がなく、考えにくい。

正答率:84%

テーマ:【長文1/3】ランブル鞭毛虫症の診断

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