112D46

75歳の女性。抑うつ気分を訴えるのを心配した隣人に付き添われて来院した。約3年前から徐々に物忘れが進行し、2年前にAlzheimer型認知症と診断され、ドネべジルを服用している。5か月前に長男が交通事故で死亡し、その直後から著明な抑うつ傾向を認め、「生きていても仕方がない」と頻繁に口にするようになった。夫は10年前に死亡し、現在は一人暮らしである。診察時、「死んだ長男のことばかり考えているだけなので、治療は受けなくていい。家族にも連絡しないで欲しい」と述べる。身体診察では異常所見を認めない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは19点(30点満点)。

対応として適切なのはどれか。

ドネペジルを増量する。
できるだけ安静にするよう指示する。
家族への連絡の承諾を得られるよう説得する。
病状を地域の精神保健福祉センターに連絡する。
付き添ってきた隣人の同意を得て医療保護入院とする。

解答: c

112D46の解説

高齢女性の抑うつ気分。Alzheimer型認知症の背景あり。
a 認知症と抑うつ気分の関係性について本文の記載だけから断定することは難しい。たしかに認知症が改善すれば抑うつ気分も改善されるのかもしれないが、現在のドネペジル投与量が不十分かどうかは判断しかねるし、ドネペジルを増量したからと言って効果が出るとも言い切れない。
b 器質的な障害はないため、安静にする必要性はない。
c 正しい。「『説得』という選択肢はバツ!」というような通説が90回台〜100回台前半の必修問題を中心に国家試験業界では存在した。これに拘泥してしまうと選べないのだが、一人暮らしで抑うつ気分の高齢者をそのまま放置するわけにもいくまい。家族へ連絡し、協力を仰ぐのが現実的だ。
d うつ病など正式な診断がついていない状況で、単に「抑うつ気分」でやってきた「高齢者」が「一人暮らし」だから、精神保健福祉センターに連絡する、というのは無責任。まずはcにあるように家族との連携を試みて、どうしてもダメなケースで公的機関のヘルプを求める運びとしたい。
e 隣人の同意では医療保護入院の要件を満たさない(家族などの同意が必要)。
※cかdか。割れ問だ。語義の強さといった国試テクニックからはcにバツをつけたくなる。が、内容面からはdにバツ。形式か、内容か、ケース・バイ・ケースであり答えはない。絶対神である出題者の意図になるべく寄り添うよう尽力しよう。それでダメならあきらめるしかない。

正答率:66%

テーマ:自殺念慮のある認知症・抑うつ患者への対応

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