112D41

83歳の男性。咳嗽と喀痰とを主訴に来院した。約1か月前に咳嗽と喀痰が出現し、1週間前には血痰も出現したため受診した。体温36.5℃。脈拍84/分、整。血圧140/76mmHg。呼吸数18/分。SpO2 92% (room air)。心音に異常を認めないが、呼吸音は右背下部にcracklesを聴取する。神経学的所見に異常を認めない。尿所見:蛋白1+、糖(―)、潜血1+。血液所見:赤血球284万、Hb 7.8g/dL、Ht 24%、白血球6,000(桿状核好中球12%、分葉核好中球55%、好酸球3%、単球5%、リンパ球25%)、血小板29万、PT-INR 1.0(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:AST 29U/L、ALT 24U/L、LD 189U/L(基準176〜353)、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン1.7mg/dL。免疫血清学所見:CRP 9.2mg/dL、MPO-ANCA 267U/mL(基準 3.5 未満)、PR3-ANCA 3.5U/mL 未満(基準 3.5未満)、抗核抗体陰性、抗GBM抗体陰性。気管支鏡によって採取した気管支肺胞洗浄液は肉眼的に血性であった。腎機能障害が進行したため腎生検を施行した結果、壊死性半月体形成糸球体腎炎を認めた。胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)とを別に示す。

最も考えられる疾患はどれか。

結節性多発動脈炎
Goodpasture症候群
顕微鏡的多発血管炎
多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症〈Churg-Strauss症候群〉

解答: c

112D41の解説

高齢男性の咳嗽と喀痰。画像ではA, Bとも右肺野を中心とした浸潤影がみられており、肺炎を疑う。血痰がみられていること、腎機能障害がみられていることからは血管炎による病態が考えやすい。壊死性半月体系性糸球体腎炎、MPO-ANCA陽性、といった情報より顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉を考える。
a MPO-ANCAは陽性とならない。
b 抗基底膜抗体が陽性となる。MPO-ANCAは陽性とならない。
c 正しい。上記の通り。
d PR-3 ANCAが陽性となる。
e MPO-ANCA陽性なのは矛盾しないが、好酸球が上昇するはずだ。
※極論を言えば、MPO-ANCAと好酸球だけみれば診断に至る超平易な問題のはずなのだが、正答率は88%と低かった。実は112回医師国家試験ではMPAが3問も出題された(ほか、112A23112A49)。本問は3回目のMPAだったため、「そんなはずはない!」と裏を読んでしまった者は心理的にcを選べなかったのかもしれない。

正答率:89%

テーマ:顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の診断

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