112C32

75歳の男性。労作時の呼吸困難と体重減少とを主訴に来院した。5年前から労作時の呼吸困難を自覚していたが徐々に増強し、体重も半年前と比較して8kg減少したため心配になり来院した。7年前に肺炎で入院治療を受けている。喫煙は30本/日を50年間。意識は清明。身長162cm、体重39kg。体温36.5℃。脈拍96/分、整。血圧140/70mmHg。呼吸数24/分。SpO2 91 % (room air)。心音は I音とII音の減弱を認めるが心雑音は認めない。呼吸音は減弱している。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球435万、Hb 13.7g/dL、Ht 41%、白血球7,200、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.4g/dL。CRP 0.4mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.42、PaCO2 47Torr、PaO2 62Torr、HCO3- 28mEq/L。呼吸機能所見:%VC 78%、FEV1% 42%。胸部エックス線写真(A)と胸部CT (B)とを別に示す。

この疾患について誤っているのはどれか。

除脂肪体重は予後と関連する。
高蛋白・高エネルギー食が望ましい。
脂質の割合が高い栄養素配分が基本である。
安静時エネルギー消費量は予測値より低下する。
食事に伴う呼吸困難が食事摂取量減少の一因となる。

解答: d

112C32の解説

高齢男性の労作時呼吸困難と体重減少。長期にわたる喫煙歴や呼吸音の減弱、閉塞性疾患を示唆するFEV1%の低値、などより慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉を疑う。画像ではAにてビア樽状の胸郭変形を、Bにて気腫性変化を指摘可能。COPDの診断まではスムーズだが、本問では栄養と関連する項目が聞かれているため、やや斬新といえる。正答率も50%を下回った。
a 除脂肪体重〈fat-free mass;FFM〉は筋重量を反映する。ゆえに運動耐容能や予後と関連する。
b COPDでは呼吸などにエネルギーを消費するため、高エネルギー食が望ましい。呼吸筋を動かすために消費される蛋白も多く摂らせる。
c 呼吸商の少ない脂肪の摂取率を上げることも望ましい(参考:呼吸商は炭水化物では1、タンパク質では約0.8、脂肪では約0.7)。
  ※呼吸商が少ないほど、使用した酸素に対する二酸化炭素産生量が低く、COPD患者には有利。
d 誤り。bでも示したように、呼吸にエネルギーを消費する。そのため、予測値より上昇する(予測値の120〜140%に増加することが知られる)。これにより消耗性に体重減少がみられる。
e 記載の通りの機序により、食事摂取量が減少することも体重減少に寄与する。

正答率:47%

テーマ:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉と栄養について

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