112B33

59歳の男性。左腎細胞癌の診断で腎部分切除術を受け入院中である。手術2時間後にドレーンから血性の排液があり、意識レベルが低下した。JCS II-20。脈拍152/分、整。血圧56/42mmHg。呼吸数16/分。SpO2は測定できなかった。腹部は軽度膨満している。血液所見:赤血球218万、Hb 5.0g/dL、Ht 18%、白血球9,300、血小板15万。

次に行うべき処置として誤っているのはどれか。

酸素投与
赤血球輸血
血小板輸血
細胞外液の投与
ノルアドレナリン投与

解答: c

112B33の解説

腎細胞癌は一般に多血なことが多い(そのため原則として生検は禁忌となることも確認しておこう)。腎部分切除後にドレーンから血性排液があり、血圧が高度低下、赤血球やHb, Htも高度低下していることから、術後の出血による循環血液量減少性ショックと考えられる。
a Hbが不足しているため、少しでも酸素を受け取りやすくすべく酸素投与するのは正しい判断。
b 重度な貧血があり、赤血球輸血を行いたい。
c 誤り。血小板数は15万と保たれており、これを輸血する必要はない。
d 循環血液量が減少している以上、細胞外液(生理食塩水や乳酸リンゲル)の投与も必須。
e 約20%の受験生が本選択肢を選び、撃沈した。むろん、ノルアドレナリン単独投与は禁忌である(循環血液量が減少している状況では昇圧薬の効果が果たせないため)。が、bやdの処置と組み合わせて行う分には問題ない。本選択肢の出題適正についてはいろいろな意見があるだろう。が、筆者は良肢だと思う。これほどまでに国試が進化しており、私自身も「総合的に考えろ! 暗記じゃない! 思考力を養え! 白黒つけすぎるな!」といった指導を日々行っている。にもかかわらず、いまだ机の上の学問から脱却できない従来型の学習や思考プロセスしかできない残党が多くいるのは残念だ。

正答率:80%

テーマ:循環血液量減少性ショックへの処置

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし