112A49

45歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。2週間前の起床時に右足背に痛みを自覚し、その後、右足関節の背屈が困難になった。5日前から左手の示指と中指に痛みを伴うびりびり感が出現し、昨日から左足関節の背屈も難しくなったため受診し、入院となった。意識は清明。身長180cm、体重72kg。体温37.8℃。脈拍92/分、整。血圧150/72mmHg。呼吸数14/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。脳神経に異常を認めない。筋力は上下肢とも近位筋は正常、遠位筋では左右差のある筋力低下がみられた。四肢の腱反射は全般的に低下し、Babinski徴候は陰性。左正中神経領域と右浅腓骨神経領域とに痛みを伴う感覚低下が観察された。小脳系に異常を認めない。髄膜刺激症候はない。尿所見:蛋白1+、潜血1+、沈渣に赤血球10〜20/1視野。血液所見:赤血球352万、Hb 11.8g/dL、Ht 32%、白血球12,500(桿状核好中球10 %、分葉核好中球63%、好酸球1%、好塩基球1%、単球2%、リンパ球23%)、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン4.2g/dL、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン1.7mg/dL、血糖96mg/dL、HbA1c 5.2%(基準4.6〜6.2)、Na 136mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 99mEq/L。免疫血清学所見:CRP 6.2mg/dL、抗核抗体陰性、MPO-ANCA 62U/mL(基準3.5未満)、PR3-ANCA 3.5U/mL未満(基準3.5未満)。胸部エックス線写真で異常を認めない。入院翌日の夜に下血があり下部消化管内視鏡検査を施行したところ、上行結腸に潰瘍を認め、生検を行った。生検組織のH-E染色標本を別に示す。

最も考えられるのはどれか。

多発性硬化症
サルコイドーシス
顕微鏡的多発血管炎
Guillain-Barré症候群
全身性エリテマトーデス〈SLE〉

解答: c

112A49の解説

中年男性の歩行困難。足関節の背屈が困難であり(☞浅腓骨神経障害)、手にもびりびり感(☞正中神経障害)が出ていることから、ニューロパチーが原因と考えられる(遠位筋優位の筋力低下もそれを裏付ける)。これに加え、発熱、腎障害、軽度貧血、白血球増加、といったキーワードが並んでおり、血管炎が考えやすい。MPO-ANCAが高値であることから顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉を考えよう(好酸球上昇はなく、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症〈EGPA〉は否定的)。画像では血管のフィブリノイド壊死がみられている。血管炎により微小血管が破綻しやすい病態であり、上行結腸に潰瘍がみられても矛盾はない。
a 末梢神経ではなく、中枢神経が障害される。
b 病理では非乾酪性の肉芽腫と多核巨細胞が同定される。
c 正しい。上記の通り。
d ニューロパチーはみられるも、その他の全身症状が説明つかない。
e 汎血球減少や、抗核抗体陽性をみる。
※MPO-ANCAが高値となる疾患はcしかなく、正答率はほぼ100%であった。確実に確保したい問題。

正答率:99%

テーマ:顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の診断

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