112A28

25歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。5日前から38℃前後の発熱、咽頭痛、上腹部痛および食欲低下があり、3日前に自宅近くの診療所で感冒に伴う胃腸炎と診断され総合感冒薬と整腸薬とを処方されたが症状は改善しなかった。昨夜から前胸部不快感が出現し、本日、呼吸困難が出現したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。妊娠歴はない。最終月経は2週間前。意識は清明だが表情は苦悶様。体温36.8℃。脈拍92/分、整。血圧72/48mmHg。呼吸数36/分。SpO2 82%(room air)。四肢末梢の冷感を認める。口唇にチアノーゼを認める。頸静脈の怒張を認める。心音にIII音とIV音とを聴取する。呼吸音は両側でwheezesとcoarse cracklesとを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球482万、Hb 14.1g/dL、Ht 41%、白血球14,200、血小板17万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST 519U/L、ALT 366U/L、LD 983U/L(基準176〜353)、CK 222U/L(基準30〜140)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖199mg/dL、Na 128mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 2.1mg/dL。心筋トロポニンT陽性。動脈血ガス分析(room air):pH 7.32、PaCO2 20Torr、HCO3- 10mEq/L。仰臥位のポータブル胸部エックス線写真(A)、心電図(B)及び心エコー図(C)を別に示す。

最も可能性の高い疾患はどれか。

肥大型心筋症
急性心筋梗塞
Brugada症候群
感染性心内膜炎
ウイルス性心筋炎

解答: e

112A28の解説

呼吸困難を主訴に来院した若年女性。先行する感冒症状があり、血圧低下、酸素化不良を認める。胸部エックス線では両側胸水貯留とbutterfly shadow〈蝶形陰影〉を認める。心電図ではII誘導で見るとわかりやすいが房室解離とwide QRSを認めており、心室頻拍を考える。誘導によってはST上昇も指摘可能。心エコーでは左室の拡大は認めないが、明らかに収縮能が低下している。これらから急性心筋炎の診断となる。心筋逸脱酵素の上昇も矛盾しない。
a エコー所見では肥大した左室壁を認めるはずであるが、本症例では10mm未満であり、正常~やや菲薄化している。
b 既往歴のない若年女性が心筋梗塞を呈する可能性は極めて低い。
c Brugada症候群であれば失神の既往や家族歴を有することが多い。また、突然心室性不整脈を来したり、検診にて心電図異常を指摘されて来院することが多く、心不全症状で来院したという病歴からは考えにくい。
d 感染性心内膜炎では、発熱を始めとする炎症所見を認める。また、エコーにて収縮能は保たれ、弁に付着した疣贅を認めるはずである。
e 正しい。上記の通り。

正答率:90%

テーマ:ウイルス性心筋炎の診断

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