111G56

68歳の女性。異常な言動を心配した夫に伴われて来院した。2か月前から自宅で横になっていることが多くなった。夫によると金銭問題はないにもかかわらず、「所得税が払えない。去年のお盆に先祖供養を十分しなかったからだ」と繰り返し訴えるという。食事量が減り、体重が1か月で5kg減少した。入浴を嫌がり、夜は眠らず、ぶつぶつ何か言っている。50歳ごろから高血圧症で内服治療中である。質問には小声で短く答えるが、うつむきがちで返答に時間がかかる。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは26点(30点満点)であった。治療の必要性を説明すると「お金がなくて薬代を払えない」と拒否した。身長150cm、体重50kg。神経学的所見に異常を認めない。甲状腺機能を含めた血液検査所見に異常を認めない。

最も考えられるのはどれか。

気分障害
適応障害
症状性精神病
脳血管性認知症
恐怖症性不安障害

解答: a

111G56の解説

貧困妄想、罪業妄想、食欲不振、不眠、小声で返答が遅い、などうつ病に特徴的な症候がみられている。「ぶつぶつ何か言っている」といった統合失調症を思わせる記載もあり、確定診断にはもう少し精査・経過の観察が必要となりそうだ。
a 正しい。うつ病または躁うつ病が考えやすく、これらは気分障害に含まれる。
b 明確なストレスを原因とし、3か月以内に情動・行動面の障害が出現する病態。本文中では明確なストレスについての記載がなく、否定的。
c 内科的疾患等により精神症状がみられる病態。「甲状腺機能を含めた血液検査所見に異常を認めない」という記載より否定的。
d 「神経学的所見に異常を認めない」という記載より否定的。
e 特定の対象や状況に対して、恐怖や不安を感じる病態。そうした記載は本文中にない。

正答率:81%

テーマ:気分障害の診断

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