111D51

28歳の女性。妊娠に関する相談のため来院した。3年前から全身性エリテマトーデス〈SLE〉で自宅近くの医療機関に通院しており、副腎皮質ステロイドの内服で、病状は1年以上前から安定している。近い将来、妊娠を希望しており相談のため紹介されて受診した。体温36.5℃。脈拍68/分、整。血圧108/62mmHg。顔面、体幹および四肢に皮疹を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。下腿浮腫を認めない。(持参した前医の検査データ)尿所見:蛋白(−)、潜血(−)。血液所見:Hb 12.0g/dL、白血球4,200、血小板15万。血液生化学所見:尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉80IU/mL(基準20未満)、抗核抗体1,280倍(基準20以下)、抗DNA抗体(RIA法)12IU/dL(基準7以下)、抗Sm抗体陽性、抗RNP抗体陽性、抗SS-A抗体陽性、抗リン脂質抗体陰性、CH50 35U/mL(基準30〜40)、C3 84mg/dL(基準52〜112)、C4 29mg/dL(基準16〜51)。診察の結果、妊娠は可能と判断された。

この患者でみられる自己抗体で妊娠の際、胎児に影響を与える可能性があるのはどれか。

抗核抗体
抗Sm抗体
抗RNP抗体
抗SS-A抗体
リウマトイド因子〈RF〉

解答: d

111D51の解説

全身性エリテマトーデス〈SLE〉の背景がある妊娠を希望する女性が相談にやってきた。さまざまな抗体が陽性だが、このうち胎児に影響を及ぼす可能性が最も高いものを選ばねばならない。
a 細胞内の核に対する抗体の総称。b〜dはすべて抗核抗体に含まれるため、本選択肢が正解となる余地はない。
b SLEで陽性となるも、胎児への影響は知られていない。
c 混合性結合組織病〈MCTD〉で陽性となるも、胎児への影響は知られていない。
d 正しい。Sjögren症候群で陽性となる抗体だが、SLEでみられてもよい。児へ移行し、新生児ループスや房室ブロックを惹起することが知られている。
e 関節リウマチなどさまざまな疾患で陽性となるも、胎児への影響は知られていない。
109B22にinspireされた問題と思われる。当時の出題を単に「IgGは胎盤通過性があるから」とだけで片付けていては本問は解けない。

正答率:63%

テーマ:胎児に影響を与える可能性がある妊婦の自己抗体

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