111A40

52歳の男性。前胸部痛のため救急車で搬入された。排便時に突然、前胸部痛が出現し気分が悪くなったため救急車を要請した。高血圧を指摘されていたがそのままにしていた。心拍数84/分、整。血圧80/50mmHg。呼吸数24/分。SpO2 は測定不能である。四肢末梢の著明な冷感を認める。胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)とを別に示す。

この患者の所見として考えにくいのはどれか。

心音の減弱
頸静脈怒張
下腿浮腫
奇脈
遅脈

解答: e

111A40の解説

前胸部痛で搬送された52歳男性。未治療の高血圧症の既往があり、排便時にいきんだことで血圧が上昇しStanford A型解離を発症したと考える。Aでは縦隔と心陰影の拡大を、Bでは解離腔形成と心臓周囲に液体貯留を認める。血圧も低下しており大動脈解離に合併した心タンポナーデと診断する。
a 心膜液貯留のため心音は減弱する。
b・c 心膜液貯留により心室拡張不全となるため静脈還流量が減少し中心静脈圧の上昇、すなわち頸静脈怒張や下腿浮腫がみられる。
d 吸気時の収縮期血圧低下が10mmHg以上となり,小脈となる現象を奇脈という。吸気時に右室への還流量が増加することで左室の拡張障害が起こり1回拍出量の低下を来す。心膜液貯留もあるので余計に拡張が障害され収縮期血圧が低下するのである。
e 誤り。遅脈とは脈の立ち上がりが緩やかになることであることである。大動脈弁狭窄症のように拍出するのに時間がかかる場合に見られる。Stanford A型大動脈解離では弁まで解離が及ぶことで大動脈閉鎖不全を来すため速脈となる。

正答率:90%

テーマ:Stanford A型解離とそれに合併した心タンポナーデの所見

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