110I69

50歳の女性。ぼーっとした様子になったことを心配した家族に連れられて来院した。もともと明るい性格で、家事やパートタイムの仕事を活発にこなしていたが、1か月前に長男が大学受験に失敗した頃から「ゆううつだ、元気が出ない」と訴え始めた。家族によると、2週前に自宅近くの診療所を受診し抗うつ薬と睡眠薬とを処方されたが改善せず、数日前からぼーっとした様子になったという。家事の手際が普段よりはるかに悪く、時間がかかっている。5年前に人間ドックで慢性甲状腺炎を指摘されていた。診察時、抑うつ気分、意欲の低下および注意機能の低下がみられた。頭部MRIで異常を認めない。脳波検査では基礎波として広汎な8〜9Hzのα波がみられた。
この患者にみられる精神障害として最も考えられるのはどれか。
気分障害
適応障害
解離性障害
症状性精神障害
Alzheimer型認知症

解答: d

110I69の解説

慢性甲状腺炎の背景があり、抑うつ症状がみられていることから、症状精神障害を考える。
a △。慢性甲状腺炎を背景にみられているとすれば気分障害は否定的。が、実は5年前の人間ドックの結果と今回のエピソードは関係のない可能性もあり、その観点からは本選択肢を完全に否定することは難しい。
b △。「1か月前に長男が大学受験に失敗した頃から」という記載からは適応障害も考えられる(適応障害の下位概念である短期抑うつ反応の可能性も否定はできない)。完全に否定することは難しい。
c 比較的長期間にわたり抑うつ症状を呈することはない。
d 正しい。上記の通り。
e 頭部MRIで脳の萎縮をみるはずである。
※中高年女性の抑うつ症状の背景に慢性甲状腺炎などが潜んでいることは多く、出題者はそのメッセージを伝えたかったのであろう。むろん臨床的にはd一択であるのだが、aやbも完全に否定することはできず、医師国家試験で問題として出題されるものとしては微妙に思った。このタイプの問題を「メッセージ性の強すぎる問題」と筆者は呼んでいる。

正答率:59%

テーマ:症候性精神障害(慢性甲状腺炎〈橋本病〉の背景)の診断

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