110D23

63歳の男性。前胸部痛を主訴に来院した。1か月前から、1週間に1回程度の頻度で200m程度の歩行時に前胸部痛が出現するようになった。今朝から、軽労作で2分程度の発作を繰り返すようになったため心配になって受診した。高血圧症と糖尿病の既往があり治療中であった。身長164cm、体重80kg。体温36.8℃。脈拍72/分、整。血圧166/92mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液所見:赤血球472万、Hb 13.2g/dL、Ht 40%、白血球7,800、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、AST 32U/L、ALT 34U/L、LD 210U/L(基準176〜353)、CK 122U/L(基準30〜140)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、空腹時血糖130mg/dL、HbA1c 7.2%(基準4.6〜6.2)、トリグリセリド190mg/dL、HDLコレステロール25mg/dL、LDLコレステロール148mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 100mEq/L、トロポニンT陰性。胸部エックス線写真で異常を認めない。心電図を施行するため検査室に移動したところ、胸部症状が出現した。その時の心電図(A)を別に示す。直ちに硝酸薬の舌下投与を行い、2分程度で症状は改善した。改めて施行された心電図(B)を別に示す。急性冠動脈症候群の診断で緊急入院となり、冠動脈造影を施行された。冠動脈造影像(C、D)を別に示す。
この患者への対応として適切なのはどれか。
冠動脈バイパス術
経皮的心肺補助〈PCPS〉
心臓リハビリテーション
運動負荷心筋シンチグラフィ
t-PA〈tissue plasminogen activator〉の投与

解答: a

110D23の解説

今朝から2分程度の発作が繰り返されるようになっているため、急性冠症候群〈ACS〉と考えられる。画像AではI, II, III, aVF, V2〜6にST低下がみられている。画像BではSTの改善がみられている。画像Cでは主幹部に狭窄が、画像Dでは右冠動脈に狭窄がみられる(画像Cでは他部分にも狭窄がありそうだが、主幹部の評価さえできてしまえば他の情報は非専門医にとって不要である)。
a 正しい。主幹部狭窄があるため、冠動脈バイパス術の適応となる。
b バイタルは保たれており、経皮的心肺補助〈PCPS〉は不要。
c 発作が頻発しており、リハビリテーションを行うタイミングではない。
d 労作性狭心症に行う。
e 一定の要件を満たした血栓性疾患に行う。

正答率:94%

テーマ:急性冠症候群〈ACS〉への対応

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