110A34

62歳の男性。意識障害を主訴に来院した。1か月前から咳嗽が出現し、血痰を認めたため5日前に受診した。喫煙は40本/日を42年間。心臟ペースメーカ植え込み術を受けている。初診時の血液所見:赤血球374万、Hb 11.1g/dL、Ht 34%、白血球5,600、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン2.5g/dL、総ビリルビン0.6mg/dL、AST 35U/L、ALT 38U/L、LD 552U/L(基準176〜353)、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン2.1mg/dL、血糖96mg/dL、Na 145mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 10.0mg/dL。心電図でQTc短縮を認めた。初診時の胸部エックス線写真(A)と喀痰細胞診のPapanicolaou染色標本(B)とを別に示す。精密検査目的で入院予約を行い帰宅を指示した。2日前から倦怠感、食欲不振、口渇および便秘が出現し、つじつまの合わない会話をするようになった。昨日からは呼びかけには反応するもののすぐに眠ってしまい、尿失禁も認めたため家族に付き添われて再度受診した。来院時、錯乱状態を示し、本人からの病歴聴取は困難であった。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。筋力低下、運動障害は明らかでない。身長168cm、体重53kg(最近6か月で6kg減少)。体温36.8℃。脈拍80/分、整。血圧130/70mmHg。呼吸数16/分。SpO2 93%(room air)。両側の胸部で呼吸音の減弱を認めた。
病態悪化の原因検索のため、まず行うべき検査はどれか。
髄液検査
脳MRI検査
心エコー検査
血清電解質の再検査
血清クレアチニンの再検査

解答: d

110A34の解説

咳嗽、血痰、喫煙歴、などより肺癌が疑われる。画像Aは心拡大か無気肺か判断しかねる所見であるが、ペースメーカーが植え込まれていることはとにかく押さえたい。画像Bでは異型細胞の集塊がみられ、核内のクロマチンが粗大顆粒状となっている。扁平上皮癌を考えさせる所見だ。意識障害、口渇、便秘、尿失禁(尿量の増加を疑う)などより高カルシウム血症が考えやすい。偽性副甲状腺機能亢進症を考えよう。
a 髄膜炎や脳炎などを考えた場合に行う。
b 脳腫瘍や脳膿瘍などを考えた場合に行う。本文中の記載や画像Aからペースメーカーを留置しており、禁忌肢である。
c 感染性心内膜炎〈IE〉などを考えた場合に行う。
d 正しい。カルシウム値を評価したい。
e 腎機能の低下を評価するには有用だが、本患者の主訴である意識障害は腎不全によるものとは考えにくい。

正答率:84%

テーマ:偽性副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症の検査

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