109I54

55歳の男性。全身倦怠感、体重減少および腹痛を主訴に来院した。過敏性腸症候群の診断で5年前から症状に応じて外来診療を受けている。3か月前から全身倦怠感が続き、この3か月で体重が5kg減少した。1か月前から内服を継続していたが右下腹部痛が増悪してきた。4、5日前から仕事への意欲が低下し職場での人間関係がうまくいかなくなったため受診した。喫煙歴と飲酒歴とはない。身長155cm、体重49kg。脈拍84/分、整。血圧100/78mmHg。眼瞼結膜は貧血様である。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。便通は週3回で硬便であるが、明らかな血便はなく、ほぼ1日中腹痛がある。血液所見:赤血球274万、Hb 7.6g/dL、Ht 22%、白血球5,400、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 21U/L、ALT 11U/L、LD 179U/L(基準176〜353)、ALP 227U/L(基準115〜359)、γ-GTP 40U/L(基準8〜50)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL。CRP 0.1mg/dL。
対応として適切なのはどれか。
精神科医へのコンサルテーション
過敏性腸症候群の治療薬変更
器質的疾患の検索
中心静脈栄養
経過観察

解答: c

109I54の解説

過敏性腸症候群についての一般問題は頻出。105A3などを参照されたい。この問題にあるように、体重減少は来さないし、また「ほぼ1日中腹痛」というのもおかしい。さらに、Hb 7.6g/dLと貧血が強いのも、現在の問題は過敏性腸症候群ではないことを示唆している。55歳という年齢も加味し、大腸癌を疑うべきだろう。
a 精神科疾患と決めつけてかかるのはよくない。
b 過敏性腸症候群の診断にとらわれるのはよくない。
c 正しい。「器質的疾患」とは具体的には上記のように大腸癌を考える。
d 全身倦怠感や体重減少は消耗が原因であり、栄養摂取ができていないわけではない。
e 重篤な疾患を見逃す可能性があり、経過観察は不可。

正答率:88%

テーマ:大腸癌疑い患者への対応

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