109E60

次の文を読み、60~62の問いに答えよ。
63歳の女性。腹部膨隆と尿失禁とを主訴に来院した。
現病歴:2年前から腹部膨満感を認めるようになった。次第に腹部膨隆が目立つようになり、食欲はあるが食事をとるのがつらく、時々尿失禁を認めるようになったため受診した。
既往歴:30歳時に子宮内膜症。
生活歴:幼少期に両親が離婚して母親と2人で暮らしていたが、母親が死亡したため3年前からは一人暮らし。
家族歴:父親は詳細不明。母親が肺炎のため85歳で死亡。
現症:意識は清明。身長157cm、体重55kg。体温36.5℃。脈拍84/分、整。血圧166/90mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は著明に膨隆し、腫大した肝と腫瘤とを腹部全体に触知する。腸雑音に異常を認めない。四肢に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体1+、潜血1+、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球406万、Hb 12.3g/dL、Ht 41%、白血球6,130、血小板22万。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン4.5g/dL、総ビリルビン0.4mg/dL、AST 18U/L、ALT 9U/L、LD 157U/L(基準176~353)、ALP 288U/L(基準115~359)、γ-GTP 44U/L(基準8~50)、アミラーゼ95U/L(基準37~160)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、尿酸6.3mg/dL、血糖98mg/dL、総コレステロール195mg/dL、トリグリセリド152mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 103mEq/L。腹部単純CTの冠状断像を別に示す。
今後経過中に出現すると考えられる症候として可能性が最も高いのはどれか。
浮腫
めまい
けいれん
顔貌の異常
皮膚の色素異常

解答: a

109E60の解説

画像より、多発性肝嚢胞・嚢胞腎の診断。これにより腹部膨隆がみられ、また膀胱圧迫により尿失禁の主訴につながっている。血圧166/90mmHgと高値をみているのも嚢胞腎によって説明がつく。
a 正しい。今後、腎機能低下が増悪するにつれ、浮腫の出現が予想される。
b めまいは小脳や内耳、脊髄後索の異常でみられる。
c 脳動脈瘤を合併し、それが破裂してけいれん、というストーリーも考えうるが、「可能性が最も高い」という観点からはaに正答をゆずる。
d 糖原病I型(人形様顔貌)、Cushing症候群(満月様顔貌)、Parkinson病(仮面様顔貌)など特徴的な顔貌をみる疾患はいくつかあるが、本疾患ではみられない。
e 色素失調症など一部の疾患でみられるも、本疾患ではみられない。

正答率:87%

テーマ:【長文1/3】多発性嚢胞腎の症候

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