109E54

70歳の男性。開腹手術のため全身麻酔中である。プロポフォールで導入後、セボフルラン、レミフェンタニル及びロクロニウムで維持している。酢酸リンゲル液を輸液中である。手術開始前、皮膚の消毒中に血圧と心拍数とが低下してきた。膀胱温36.0℃。SpO2 99%。呼気終末二酸化炭素濃度〈ETCO2〉37mmHg(基準 35〜45)。気道内圧10cmH2O。皮膚に発赤を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。
皮膚切開までの対応として適切なのはどれか。
アドレナリン投与
ニトログリセリン投与
オピオイドの拮抗薬投与
ロクロニウムの拮抗薬投与
セボフルランの吸入濃度減量

解答: e

109E54の解説

使用されている麻酔薬についてまず説明しておく。
 ・プロポフォール:全身麻酔の導入・維持に用いられる鎮静薬(静脈内点滴)。
 ・セボフルラン:全身麻酔の導入・維持に用いられる吸入麻酔薬。
 ・レミフェンタニル:オピオイド受容体に作用する鎮痛薬(静脈内点滴)。
 ※上記3つは交感神経抑制作用があり、血圧低下や徐脈をきたしうる。
 ・ロクロニウム:非脱分極性筋弛緩薬。
本患者ではこれら薬剤を投与中に血圧と心拍数とが低下しており、交感神経抑制が起こったと考えられる。なお、気道内圧の基準値は10~20cmH2O。本症例では基準値内にあるため、喀痰などが気道内に詰まってしまった状態は否定的だ。
a アナフィラキシーショック時に使用する。
b 血管拡張薬であり、ますます血圧が低下してしまう。
c レミフェンタニルによる血圧低下や徐脈の可能性も否定はできないが、本剤は投与中止後数分で血中濃度が急速に低下するため、拮抗薬投与までは不要。なお、本症例ではレミフェンタニルが使用されているが、もしフェンタニルやモルヒネが用いられていたとしても、これらの薬剤での血圧低下は認めにくいため、拮抗薬投与は考慮されない。
d ロクロニウムは血圧低下や徐脈の原因とならない。
e 正しい。セボフルランの作用を落とすことで、血圧・心拍上昇を狙う。なお、この状況下ではエフェドリン静注も有効(103G38に出題あり)。

正答率:76%

テーマ:全身麻酔中にみられた徐脈と血圧低下への対応

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