109D45

32歳の女性。甲状腺の検査を希望して来院した。5か月前に第2子を出産した。妊娠前に受けた検査で抗甲状腺ペルオキシダーゼ〈TPO〉抗体強陽性であったため、妊娠期間中にも定期的に甲状腺ホルモン検査を受けていたが、これまでに異常を指摘されたことはなく自覚症状もない。体温36.7℃。脈拍84/分、整。血圧126/86mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。びまん性のやや硬い甲状腺腫を触れるが圧痛はない。胸腹部に異常を認めない。尿所見:蛋白(−)、糖(±)、ケトン体(−)。血液所見:赤血球420万、Hb 12.3g/dL、Ht 40%、白血球6,700、血小板21万。血液生化学所見:アルブミン4.0g/dL、AST 13U/L、ALT 15U/L、クレアチニン0.4mg/dL、血糖146mg/dL、HbA1c 5.4%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール170mg/dL、トリグリセリド90mg/dL、Na 137mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 102mEq/L、TSH 0.02μU/mL未満(基準0.4〜4.0)、FT4 2.0ng/dL(基準0.8〜1.8)。CRP 0.3mg/dL未満。
この時点での方針として正しいのはどれか。
抗甲状腺薬を投与する。
甲状腺亜全摘術を行う。
放射性ヨウ素内用療法を行う。
副腎皮質ステロイドを投与する。
2〜4週後に甲状腺機能を再検する。

解答: e

109D45の解説

TSH↓、FT4↑より、軽度の甲状腺機能亢進症を考える。抗甲状腺ペルオキシダーゼ〈TPO〉抗体はBasedow病でも慢性甲状腺炎〈橋本病〉(とその一過程である無痛性甲状腺炎)でも見られるため、特異度は高くない。触診所見でびまん性やや硬なため、Basedow病は考えにくく、無痛性甲状腺炎の可能性が高い。妊娠・出産後には自己免疫性疾患の病勢が不安定になるため、本問のような経過になったと思われる。
a~c Basedow病に有効。無痛性甲状腺炎は甲状腺の崩壊によるホルモン漏出が病態の本質であり、こうした治療は無効。
d 亜急性甲状腺炎に有効。
e 正しい。自覚症状がないため、現時点では経過観察でよい。

正答率:88%

テーマ:無痛性甲状腺炎の治療

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