109D38

70歳の男性。腎機能悪化を指摘されたため来院した。2か月前から発熱、咳嗽および全身倦怠感が出現し次第に体重が減少してきた。心配になり自宅近くの診療所を受診し、血清クレアチニンの上昇が認められたため紹介されて受診した。喫煙は20本/日を50年間。飲酒は日本酒1合/日を50年間。意識は清明。身長153cm、体重48kg。体温37.2℃。脈拍76/分、整。血圧150/76mmHg。呼吸数22/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。心音に異常を認めない。両側の背下部でfine cracklesを聴取する。顔面と下腿とに浮腫を認める。尿所見:蛋白1+、蛋白定量0.87g/日、糖(−)、潜血3+、沈渣に赤血球 多数/1視野、白血球1〜5/1視野。血液所見:赤血球352万、Hb 10.2g/dL、Ht 32%、白血球10,700(桿状核好中球2%、分葉核好中球87%、好酸球1%、単球1%、リンパ球9%)、血小板36万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.1g/dL、尿素窒素34mg/dL、クレアチニン2.5mg/dL、尿酸7.6mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 106mEq/L。免疫血清学所見:CRP 4.5mg/dL、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、MPO-ANCA 160EU/mL(基準20未満)、抗核抗体陰性。腎生検のPAS染色標本を別に示す。蛍光抗体法で糸球体に免疫グロブリンの沈着を認めない。
直ちに行うべき治療はどれか。
血液透析
赤血球輸血
副腎皮質ステロイドのパルス療法
非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉投与
アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬投与

解答: c

109D38の解説

高齢男性の発熱・咳嗽・全身倦怠感。両側肺下部のfine cracklesからは間質性肺炎の存在を考え、沈渣にて赤血球が多数みられることやクレアチニン値の上昇からは糸球体腎炎の存在を考える。画像にて半月体形成を認めており、MPO-ANCAの上昇と合わせ、顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の診断となる。
a K 4.5mEq/L、クレアチニン2.5mg/dL、尿素窒素34mg/dLでは血液透析の適応とならない。
b Hb値は10g/dLを保っており、赤血球輸血が必要な状況とは思えない。
c 正しい。MPAにはステロイドパルス療法や免疫抑制剤が有用となる。
d 消炎作用をもつが、同時に腎障害を増悪させる可能性もあり、ここでは使用されない。
e 腎保護作用のある降圧薬であるが、MPAは腎臓以外にも全身臓器に障害がみられる疾患であり、原因治療になっていない。
※実は同ブロックの109D58の本文中に解答が書いてあった。国家試験とはいえ、出題者の思いのよらぬ場所にヒントが転がっていることはあり、分からなくても諦めてはならない。

正答率:84%

テーマ:顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の治療

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