108I67

58歳の男性。倦怠感と歩行時の息切れとを主訴に来院した。20年前に糖尿病を指摘されたが治療は受けていない。5年前から蛋白尿、2年前から高血圧を認めていた。母親が糖尿病である。意識は清明。身長170cm、体重68kg。脈拍96/分、整。血圧168/96mmHg。眼瞼結膜は貧血様である。II/VIの収縮期心雑音を認める。両側の下胸部にcoarse cracklesを聴取する。下腿に浮腫を認める。尿所見:蛋白2+、糖(-)、沈渣に赤血球1~4/1視野。血液所見:赤血球270万、Hb 8.0g/dL、Ht 25%、白血球7,200、血小板12万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.2g/dL、フェリチン85ng/mL(基準20~120)、尿素窒素58mg/dL、クレアチニン5.1mg/dL、尿酸9.5mg/dL、空腹時血糖140mg/dL、HbA1c 7.2%(基準4.6~6.2)、総コレステロール190mg/dL、Na 140mEq/L、K 5.5mEq/L、Cl 111mEq/L、Ca 8.0mg/dL、P 5.5mg/dL、Fe 80μg/dL、総鉄結合能〈TIBC〉300μg/dL(基準290~390)。動脈血ガス分析(room air):pH 7.34、PaCO2 35Torr、PaO2 92Torr、HCO3- 16.5mEq/L。腹部超音波検査で両腎の大きさは正常である。
この患者に対する治療薬として適切でないのはどれか。
ループ利尿薬
カルシウム拮抗薬
スルホニル尿素薬
エリスロポエチン
炭酸水素ナトリウム

解答: c

108I67の解説

20年前に糖尿病を指摘されたが治療は受けておらず、空腹時血糖140mg/dl、HbA1c(NGSP)7.2%と確かにコントロールが悪い。両側の下胸部にcoarse cracklesを聴取するのは肺水腫(左心不全徴候)で、下腿に浮腫を認めるのは右心不全徴候。両心不全となっている。クレアチニン5.1mg/dlと腎障害が強く、そのためエリスロポエチン産生が困難になっているのであろう、Hb 8.0g/dlと貧血もみられる。Ⅱ/Ⅵの収縮期心雑音はその代償である。動脈血ガス分析ではHCO3-が16.5mEq/lと低下しており、代謝性アシドーシスになっている。
a 肺水腫に対して有効。
b 血圧168/96mmHgと高く、降圧に有効。
c 誤り。腎機能低下例ではスルホニル尿素薬の排泄が滞り、低血糖を惹起しやすい。ゆえに不適切である。
d エリスロポエチン不足による腎性貧血がみられており、有効。
e 代謝性アシドーシスの是正に有効。

正答率:66%

テーマ:糖尿病性腎症に対する治療薬

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