108A35

76歳の女性。見えにくいことを主訴に来院した。10年前に糖尿病を指摘され経口血糖降下薬を内服している。起床時に物が二重に見えることに気付き受診した。意識は清明で頭痛はなく、複視は左方視で増強する。眼瞼下垂はない。瞳孔径は両側3mmで対光反射は正常である。四肢筋力低下はなく、手袋靴下型の軽度の表在・深部感覚低下を認める。四肢の腱反射は全体に左右差なく減弱している。来院時血糖112mg/dL、HbA1c 6.4%(基準4.6~6.2)。正面視を指示した際の眼位を別に示す。
正しいのはどれか。
右外転神経の麻痺がある。
抗GQ1b抗体が陽性になる。
脳動脈瘤による圧排が原因として考えられる。
速やかに副腎皮質ステロイドのパルス療法を行う。
複視の予後は良好である。

解答: e

108A35の解説

「複視は左方視で増強する」とのことで、右動眼神経または左外転神経の麻痺を考える。画像にて、右眼が外転位をとっているので、右動眼神経の障害であろう。
108A33でも出題があるように、動眼神経麻痺を見た場合に鑑別に挙げるべきなのは;
 ・脳ヘルニア(特にテント切痕ヘルニア)
 ・脳動脈瘤
 ・糖尿病性ニューロパチー
の3つである。
本患者はHbA1c 6.4%(基準4.6~6.2)と基準値を超えており、手袋靴下型の軽度の表在・深部感覚低下を認めていることから糖尿病性ニューロパチーが考えやすい。
a 上記のように、右動眼神経の障害である。
b 抗GQ1b抗体が陽性となるのはFisher症候群。先行感染がないため否定的。
c 脳動脈瘤による動眼神経の圧排であれば、散瞳が出現するはずである。これは動眼神経(ファイバーの寄せ集め)の最も外側に瞳孔径の調節を司るファイバーが走行しているためである。
d 糖尿病患者にステロイド治療は行わない。
e 正しい。血糖コントロールにより、動眼神経障害は軽快する。

正答率:69%

テーマ:糖尿病性ニューロパチーによる複視について

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