107A43

56歳の女性。物忘れを主訴に長女に連れられて来院した。1年前から寒がりになり、冬季は家にこもってほとんど外出しなくなった。別居中の長女が訪問した際、部屋にはごみが散乱しており、受け答えが支離滅裂で長女の名前を想起することができなかったという。身長151cm、体重62kg。体温35.8℃。脈拍52/分、整。血圧108/68mmHg。呼吸数14/分。頭髪と眉毛とが疎である。胸腹部に異常を認めない。両下腿に圧痕を残さない浮腫を軽度認める。嗄声で声量は小さく、改訂長谷川式簡易知能評価スケールは7点(30点満点)。脳神経系、感覚系および小脳系に異常を認めない。筋力は正常だがアキレス腱反射で弛緩相の遅延を認める。
診断のために測定すべきなのはどれか。
抗核抗体
アンモニア
ビタミンB1
セルロプラスミン
TSH〈甲状腺刺激ホルモン〉

解答: e

107A43の解説

物忘れが主訴であるが、56歳女性であり、Alzheimer型認知症は考えにくそうだ。寒がり、脱毛、非圧痕性浮腫、アキレス腱反射弛緩相の遅延、といった記載からは甲状腺機能低下症を考える。甲状腺機能低下症では精神神経機能低下の一環として認知症症状を呈することがある(108B54などに出題あり)。
a 慢性甲状腺炎〈橋本病〉であっても抗核抗体は上昇しない。
b 肝性脳症であればアンモニア上昇をみる。
c Wernicke脳症であればビタミンB1低下をみる。
d Wilson病であればセルロプラスミン低下をみる。
e 正しい。フィードバックによる下垂体由来のTSH高値が予想される。

正答率:94%

テーマ:甲状腺機能低下症による粘液水腫性昏睡で測定すべきもの

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