106A42

64歳の女性。息切れと食欲不振とを主訴に来院した。22歳以降、健康診断のたびに蛋白尿、尿潜血および高血圧を指摘されていたが、自覚症状がないため受診しなかった。最後に健康診断を受けたのは5年前である。2か月前に両下肢の浮腫が出現し、次第に増強してきた。1週前から歩行時の息切れを自覚し、3日前から食欲がなくなったため受診した。身長164cm、体重66kg。脈拍104/分、整。血圧174/104mmHg。呼吸数20/分。SpO2 84%(room air)。マスクで酸素投与(6L/分)を開始した。眼瞼結膜は蒼白である。聴診で収縮期心雑音を聴取し、呼吸音は減弱している。腹部は平坦、軟である。両下肢に圧痕を伴う高度な浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、潜血2+。血液所見:赤血球224万、Hb 7.2g/dL、Ht 20%、白血球7,000、血小板16万。血液生化学所見:アルブミン2.4g/dL、尿素窒素102mg/dL、クレアチニン9.2mg/dL、総コレステロール280mg/dL、Na 130mEq/L、K 6.8mEq/L、Cl 102mEq/L。動脈血ガス分析(自発呼吸、6L/分酸素投与下):pH 7.18、PaCO2 36Torr、PaO2 98Torr、HCO3- 13mEq/L。胸部エックス線写真を別に示す。
対応として適切なのはどれか。
血液透析の導入
人工呼吸器の装着
アルブミンの投与
HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与
炭酸水素ナトリウム液の大量投与

解答: a

106A42の解説

22歳時からの腎不全を思わせるエピソードがあり、クレアチニン9.2mg/dlであることから慢性腎不全を疑わせる。血液所見にて正球性貧血、眼瞼結膜は蒼白であり聴診で収縮期心雑音を聴取することから、腎性貧血による代償で心機能が亢進していることも示唆できる。K 6.8mEq/l、HCO3- 13mEq/lより尿毒症による代謝性アシドーシスも存在している。胸部エックス線写真では心拡大と胸水貯留を認めることから肺水腫の存在も指摘でき、緊急での対応が必要な慢性腎不全と判断できる。
a 正しい。尿素窒素102mg/dl、クレアチニン9.2mg/dl、K 6.8mEq/l、肺水腫の存在から血液透析の導入基準を満たしている。
b 自発呼吸があり、酸素投与下にてPaO2は保たれているため必要ない。
c 慢性腎不全に対するアルブミン投与は対症療法に過ぎず、また心不全合併下においては循環血液量増加により悪化させてしまう可能性もある。
d 総コレステロールは高値であるが、緊急に対応すべきものではない。
e pH 7.18であり、現時点では考慮しない。

正答率:92%

テーマ:末期心不全への対応

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