105D20

56歳の女性。下腹部の違和感と膨満感とを主訴に来院した。50歳で閉経するまでは月経痛が強く、月経時以外でも腰痛と排便痛とがみられた。身長156cm、体重60kg。体温36.8℃。脈拍84/分、整。血圧132/84mmHg。下腹部は膨隆し、恥骨上から臍下にかけて約8cmの柔らかい腫瘤を触知する。血液生化学所見に異常を認めない。免疫学所見:CEA 1.3ng/mL(基準5以下)、CA19-9 25U/mL(基準37以下)、CA125 88U/mL(基準35以下)。術前の骨盤部MRIのT2強調矢状断像(A)と造影T1強調矢状断像(B)とを別に示す。手術が施行され、卵巣腫瘍と診断された。摘出された腫瘍の病理組織H-E染色標本(C、D)を別に示す。
考えられるのはどれか。
明細胞腺癌
粘液性嚢胞腺癌
未分化胚細胞腫
子宮内膜症性嚢胞
成熟嚢胞性奇形腫

解答: a

105D20の解説

下腹部の違和感と膨満感とがある中高年女性である。閉経するまでは月経痛が強く、月経時以外でも腰痛と排便痛とがみられたことから内膜症が示唆される。恥骨上から臍下にかけて約8cmの柔らかい腫瘤を触知し、CA 125 が高値である。Aでは多房性な充実部と高信号な嚢胞を、Bでは低信号な嚢胞を認める。手術にて卵巣腫瘍と診断され、Cではhobnail細胞を、Dでは明細胞をみとめることから明細胞腺癌の診断となる。
a 正しい。上記の通り。
b 粘液性嚢胞腺癌ではCA19-9が高値となり、病理所見にてアルシアンブルー染色陽性の細胞を認めるはずであり、本例とは臨床像が異なる。
c 未分化胚細胞腫は若年者に発症しLD高値となり、病理では分葉状の区画と間質への小円形細胞浸潤をみるため本例と合わない。
d 子宮内膜症性嚢胞では単房性の嚢胞を認めるため画像所見が異なる。
e 成熟嚢胞性奇形腫ではCA19-9が高値となり、MRIにて内部に毛髪や歯といった児の成分を含む( hair ball )腫瘍がみられるため矛盾する。

正答率:70%

テーマ:卵巣明細胞腺癌の診断

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