105A34

62歳の男性。持続する腰痛を主訴に来院した。3か月前、ゴルフの後に腰痛が出現した。自宅近くの診療所で薬物療法と理学療法とを受けたが腰痛は軽減せず、1か月前からは左下肢痛も加わった。身長165cm、体重55kg。体温36.9℃。下部腰椎に叩打痛と運動時痛とを認める。腰椎前後屈で左殿部から左大腿部への放散痛がある。歩行は可能。Lasègueテスト両側陰性。左L4、L5及びS1神経根領域に感覚鈍麻と軽度の筋力低下とを認める。血液所見:赤血球390万、Hb 11.3g/dL、Ht 36%、白血球7,600、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、アルブミン3.5g/dL、ALP 421U/L(基準115~359)、Na 143mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 102mEq/L、Ca 11.0mg/dL、P 3.0mg/dL。CRP 0.9mg/dL。初診時の腰椎エックス線写真を別に示す。
この患者の腰下肢痛の原因として最も考えられるのはどれか。
骨粗鬆症
変形性脊椎症
化膿性脊椎炎
椎間板ヘルニア
転移性脊椎腫瘍

解答: e

105A34の解説

複数の神経根症状を認め叩打痛のある腰痛について。腰痛の鑑別で挙げられる疾患が選択肢に並んでいるが、症状や検査所見から1つずつ除外していこう。
a 骨粗鬆症による圧迫骨折では本症例と同様の所見を示すことがある。しかし、神経根症状が出ているということは脊椎がそれなりに変形しているということであるが、エックス線写真では目立った変形は認めない。さらに、圧迫骨折の診断をするためにはエックス線撮影の正面像ではなく側面像が示されるはずである。
b 一般的に、神経根症状を認めることはない。また、変形性脊椎炎の痛みは慢性疼痛であり朝の活動開始時が最も辛く、動くにつれ軽快することが多いが、そのような所見も認めない。
c 感染症であるため、発熱や炎症反応の高値が認められるはずである。また、3か月経過していれば著名な前屈制限やエックス線での骨硬化像を認める。
d 本症例のように同時に3領域の神経根症状が出現するとは考えにくい。Lasègueテストが両側陰性であることからも椎間板ヘルニアは可能性が低いだろう。
e 正しい。症状に加え、エックス線写真での骨融解像、採血でのALP上昇、Ca上昇を認め、転移性脊椎腫瘍として矛盾しない。

正答率:68%

テーマ:転移性脊椎腫瘍の診断

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