104I53

55歳の男性。突然の左腰背部痛を主訴に来院した。数年来、高血圧と心房細動で外来通院中だが服薬は不規則である。脈拍80/分、不整。血圧158/98 mmHg。尿所見:蛋白1+、潜血2+。腹部造影CTを別に示す。
考えられるのはどれか。
腎癌
腎梗塞
腎盂腎炎
尿路結石
多発性嚢胞腎

解答: b

104I53の解説

a 腎癌ではダイナミック造影CTが撮影されることが多い。腎癌は血流豊富な腫瘍であり、造影初期は腎皮質と同程度の造影効果を示し早めの排泄相でwash outされる。本症例では腎臓自体に造影効果がなく、また腎内に腫瘤も認められず、合致しない。また、腎癌の症状は血尿や側腹部の鈍痛であり突然痛みを感じることは少ない。近年では画像検査の進歩に伴い、無症状で腎癌が発見されることも多い。
b 正しい。右腎と比較して、左腎が全く造影されていない。つまり血流が滞り造影剤が届いていないということである。心房細動による血栓が腎動脈にとんだのだろう。なお、左腎は被膜に沿って帯状の造影効果を残しており、これは腎梗塞に特徴的なcortical rim signという。腎動脈以外の側副路から被膜への血流が保たれているためと考えられる。
c 腎盂腎炎で突然背部痛が起こることは少ない。また、発熱や採血所見がなく問題文だけで腎盂腎炎を疑うのは厳しい。なお、腎盂腎炎の造影CT所見は、皮質造影効果不良による皮髄境界不明瞭化と楔状の造影効果不良所見である。後者はわかりやすい画像なのでよく確認しておいてほしい。
d 所見からは最も疑わしいのが尿路結石であるが、造影CT所見で否定される。
e 嚢胞状の低吸収域が多数認められるはずであるが、画像では嚢胞は認めない。通常両側発症の遺伝性疾患である。

正答率:95%

テーマ:腎梗塞の診断

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