解決済 107E58

房室接合部調律の心電図に関して

加齢老年学の範囲で取り扱われている連問の一問目の問題についてです。
正しい心電図所見を選ばせる問題なのですが、除外選択肢としてのd.房室接合部調律に関して、講義中に説明されていた「wide QRSになるはずだ」からという部分がよく理解できませんでした。
調べてみたところ、房室接合部調律では洞除脈に対する補充収縮として出現する場合や、副交感神経の緊張亢進で出現することがあり、異所性P波はQRS波より前に出ることもありますが、QRS波の後ろに出現したりQRS波の中に隠れていることもあるそうです。
これは、房室接合部の中で興奮の起こる場所と伝導速度が異なるためとされていますが、本問においてはQRS波の中に隠れている状況を想定した上での説明ということでしょうか。
(心電図所見より、異所性P波はどこにも見られないことから消去法的に正解は得られるのですが、解説に疑問を抱いたために質問をさせていただきました。)

回答7件

  • もちろん例外はあるかもしれませんが、洞結節から出た波形はnarrow、それ以外から発生したイレギュラーな波形はwide、と僕はザックリ押さえています。

    房室接合部調律は文字通り、洞結節から作られているわけではないので、wideになるのでは、という解説かと思います。

    • ご返信ありがとうございます。
      洞結節から出た波形はnarrow、それ以外ではwideになりうることが多いと、改めて試験問題の解法術として心得ておきます。
      細かい指摘となり、失礼致しました。

  • 国試的には穂澄先生のおっしゃる覚え方である程度戦えるのだと思いますが、厳密には質問者さんの仰る通り、房室接合部調律では他に伝導障害などなければnarrow QRSになります。本問題では洞調律(規則正しい洞性Pがあり、その後にQRSが続く)であることから房室接合部調律は除外されます。

    • ご返信ありがとうございます。
      本問題に正解する上では必要な知識ではなかったかもしれませんが、もやもやしていたのですっきりしました。
      感謝いたします。

  • 89E10
    73歳の女性.急性心筋梗塞のため救急入院した.直ちに冠動脈造影を行ったところ左前下行枝に閉塞を認めたため,t-PA(組織プラスミノゲンアクチベーター)の冠動脈内投与を開始した.入院約2時間後に突然心拍数36/分,血圧が触診不能となり,意識が消失した.心雑音は聴取せず,直ちに記録した心電図で房室接合部調律を認めた.ノルエピネフリンの投与を行ったが血圧の上昇を認めなかった.
    最も考えられるのはどれか.
    a 再灌流性不整脈
    b 心室中隔穿孔
    c 左室自由壁破裂
    d 左室乳頭筋断裂
    e 脳出血
    正解:c(正答率 データなし)

    • そもそも病歴が合わないのではないかと考えました。
      たとえば、左室自由壁破裂で房室接合部調律が生じます(See 89E10)。

  • 選択肢「a. QT延長」「c. 心房細動」「e. II度房室ブロック」は真っ先に除外できますから、問題となるのは、その先に控えている「b. 洞性徐脈」「d. 房室接合部調律」の検討です。ここでは、この2つの用語それぞれの定義を復習しておきます。

    ===

    (1) 洞性徐脈
    洞性徐脈は、心電図にて洞調律で、心拍数が50bpm未満であるような状態です。
    そもそも洞調律とは、洞結節による調律のことであり、心電図では以下の3条件全てを満たす場合に定義されます。
     ● II, III, aVF 誘導のP波が陽性、かつaVR誘導のP波が陰性
     ● R-R間隔が整
     ● P波:QRS群

    (2) 房室接合部調律
    房室接合部調律は、房室接合部によって調律されている、異所性調律の一種です。
    そもそも異所性調律とは、洞調律(洞結節による調律)以外の調律のことであり、冠静脈洞調律や左房調律、房室接合部調律、心筋固有調律など、様々な種類が存在します。心筋固有調律を除いて、基本的には(P波が他の波に埋もれなければ)P波とQRS群が1対1かつR-R間隔が整ですが、P波の性状が洞性(II, III, aVFで陽性、aVRで陰性)とは限らない、という特徴を持ちます。

     ● 冠静脈洞調律 = Iで陽性かつII, III, aVFで陰性P波

     ● 左房調律 = I, V6で陰性P波

     ● 房室接合部調律 = II, III, aVFで陰性P波(逆行性P波)。
    ただし、房室接合部のどこから興奮し、どのように伝導するかによってP波の出現部位が異なります。心房に早く興奮が伝わればQRS波の前に逆行性P波を認め、心房に遅く興奮が伝わればQRS波の後に逆行性P波を認めます。QRS波と同時であれば、P波はQRS波に埋もれて見えなくなります。

     ● 心室固有調律 = 心室から興奮が開始するため、QRS波はwideとなります。P波は存在しないこともあります。心拍数が50bpm未満の場合には心室補充(固有)調律、心拍数が50bpm以上100bpm未満の場合には促進性心室固有調律、心拍数が100bpm以上の場合には心室頻拍と呼ばれます。

    ===

    本問の選択肢 b, d の検討では、最終的に P 波が洞性か否かで判断することになります。今回は洞性なので、正解は b です。

    この問題の難しさの本質は、臨床現場では必須であるものの通常の国試ではあまり要求されることの無い「心電図を読む際にはまず洞調律であるかどうかを識別する」という大原則の理解が直接的に問われたことにあります。調律について深掘りし出すとキリがないですし、今後の国試対策でどこまで対策するかは人それぞれでしょうが、個人的には「本問との出会いをきっかけとして、洞調律の定義について軽くおさらいしておく」くらいの扱いで良いのではないかと思います。

    少しでも皆さまの参考になれば幸いです。

    【出典】
    https://www.jmedj.co.jp/premium/rlec/data/5110/
    https://sindenzu.com/category/調律/
    https://www.kango-roo.com/learning/2211/

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  • 問題参照 107E58

    次の文を読み、58~60の問いに答えよ。
    79歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。
    現病歴:3年前に妻を亡くし、1人暮らし。隣県に住む娘が時々様子を見に来ており、数か月前から物忘れが目立ち、残薬も多いことに気づいたが、主治医には知らせていなかった。食事は給食サービスを受けていたが、服薬管理など生活上の問題を心配した娘が、2週前に老人ホームに入居させた。以後は介護職員が薬を管理している。約1週前から起立時や歩行時にふらつきを自覚するようになり、心配した職員に付き添われて受診した。
    既往歴:60歳で高血圧症と糖尿病とを指摘され、1年前から利尿薬、β遮断薬、抗血小板薬、スルホニル尿素薬およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬を処方されている。この1年間処方内容は変更されていない。
    家族歴:父親が脳卒中のため65歳で死亡。
    現 症:意識は清明。身長165cm、体重67kg。体温35.8℃。脈拍36/分。血圧128/64mmHg。呼吸数16/分。口腔内は湿潤している。心雑音を聴取しない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢の筋力は保たれており、浮腫を認めない。腱反射に異常はない。
    検査所見:血液所見:赤血球407万、Hb 12.4g/dL、Ht 38%、白血球6,800、血小板18万。血液生化学所見:随時血糖126mg/dL、HbA1c 6.5%(基準4.6~6.2)、総蛋白7.0g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、AST 38U/L、ALT 32U/L、Na 135mEq/L、K 4.6mEq/L、Cl 108mEq/L。CRP 0.3mg/dL。心電図を別に示す。
    心電図所見はどれか。
    • a QT延長
    • b 洞性徐脈
    • c 心房細動
    • d 房室接合部調律
    • e II度房室ブロック
  • 関連トピック

    なし