遺伝性球状赤血球症では、赤血球が“小型”で球状であるため,単位容積当たりに多くの赤血球が存在し、MCHCが高値になることが特徴的です。
MCHは正常なので、MCHC=MCH/MCV×100よりMCVが低値となるのではないかと思ったのですが、MCVが正常になり、遺伝性球状赤血球症は小球性ではなく正球性に分類されるのはどういうことなのでしょうか。
それはMCHCの正常値からの変動とそれに伴うMCVの値の変動を考えてみてはいかがでしょうか。
MCHCの基準値は31-35と狭い範囲で動きます。それに対してMCVは80-100とそれより大きい幅で動きます。
では、単純に考えてMCHを一定として、間を取ってMCHCの正常値を33にMCVは90にしてみましょう。高色素性になるとき、例えばMCHCが37と増加したときのMCVを (MCV) と表記して値を求めると、式変形して
MCH = (一定) = MCHC*MCV/100 = 33*90/100 = 37*(MCV)/100 より (MCV) = 33*90/37 ≒ 80
これはギリギリですが正球性貧血となります。
つまり、大雑把な理解として高色素性になるまでMCHCが上がるとMCVは確かに下がるが、小球性貧血に必ず至るまでの影響力はない、とかんがえます。
たしかに、105D43 では小球性貧血を呈しています。実臨床でも頻度はまれですが小球性貧血になりうるようです。
しかし、別要因として溶血により赤血球より大きい網赤血球が増加することでMCVが上がることも知られています。
(他の方の説明 https://medu4.com/topics/cadf2112c8 にもありました)
これにより球状赤血球ができても小球性貧血にならず正球性貧血を呈するとも考えられます。
結論として、高色素性になる珍しい疾患として HS が挙げられ、HSを小球性貧血か正球性貧血かだけで鑑別することを問われることはないだろうということです。かんたんに、そして頻度的にも正球性貧血になる、と覚えるほうが他の溶血性貧血などを考えても覚えやすいように思います。
ありがとうございます。
説明が非常にわかりやすくて、よく理解できました。
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