解決済 111D32 05.感染症

サイトメガルウイルス肺炎とニューモシスチス肺炎の鑑別

問題の解説では、サイトメガルウイルスはβ-dグルカンが上昇しないため、否定的とされていますが、今回はカンジダに感染しているためβ-dグルカンはその時点で上昇すると考え、そうなるとニューモシスチス肺炎かサイトメガルウイルス肺炎なのか鑑別ができなくなってしまいました。両肺炎を鑑別する良い方法はないでしょうか。

回答3件

  • あまり学問的な回答ではありませんが、、、
    本番で1つしか選べない状況を踏まえたら、β-Dグルカンが上昇しているニューモシスチスを選んでおけば、間違いになりようがないのでそれでよいのではないでしょうか?

  • りんご医学生様へ

    【ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス(CMV)肺炎の鑑別について】
    通常の診察で見られる所見では、発熱、fine cracklesは共通しています。
    画像所見ではHRCTにて、ニューモシスチス肺炎ではground-glass attenuation(GGA)が両側広範にみられ、一部病変の無い〝モザイクパターン〟が特徴です。
    一方、CMV肺炎では広範なGGA、結節と浸潤影が混在するのが特徴です。
    しかしながら、この画像所見のみで鑑別するのは難しいです。(注1)
    したがって、通常の肺炎に対する診察に加えて、どちらかを疑って、ニューモシスチスならBDGの上昇、Sabouraud培地、低酸素血症、Grocott染色。CMVなら抗原をみる(抗体はCMVの場合、既感染の可能性が高いので無意味です。)、もしくは喀痰PCR、巨細胞封入体を確認する、CMV網膜炎を確認するなどして、総合的に鑑別します。(注2)

    【解説に関して】
    鵞口瘡は新生児(生後1か月まで)にみられた場合は通常、予後良好な粘膜カンジダ症です。(注3)
    カンジダ肺炎は極めて稀です。(注4)
    したがって、β-D グルカン(BDG)が陽性になる原因に表在性のカンジダは考えずらいです。

    また、残りの選択肢の中で真菌で肺が感染臓器になるものは、ニューモシスチスのみです。(ニューモシスチスは肺以外が感染臓器になるのは稀。(注5))
    以上、穂澄先生の解説の通りです。

    【補足】
    β-Dグルカン(BDG)は深在性真菌感染症の早期診断のための補助診断として有用とされており、高い陰性予測率から除外診断に有用です。(注6)
    鵞口瘡でも3分の1でBDGが高値になるとの報告があります。(注7)
    しかし、あえて国家試験で理論的に考え難い偽陽性で、かつより重篤な深在性真菌感染症であるニューモシスチスを選ばないというストーリーは考え難いです。

    今回の場合、BDGは陽性で、両側に浸潤影があるので、より重篤な深在性真菌血症を必ず鑑別に挙げます。したがって、one bestでニューモシスチスのみです。

    【参考資料】
    注1 呼吸 33巻 10号 (2014) p1006-1011
    注2 日本胸部臨床 73巻 4号 2014年4月 p422-429
    注3 Medical Technology Vol. 23 No. 7 (1995・臨時増刊) p527-533
    注4 THE LUNG perspectives Vol 26 No 1 57-61
    注5 臨床と微生物 43巻1号 Page053-056(2016.01)
    注6 日集中医誌 (2010;17:33~38) Vol 17 Nol 1 33-37
    注7 日本周産期・新生児医学会雑誌 41巻2号 Page291(2005.06)

    以上のように考えましたが、詳細な内容まで完璧に国試本番当日に覚えておくのは不可能と思います。
    (ただ正直、ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス肺炎の画像所見の違いと、グルカンの検査特性以外は、覚えていいと思います。)
    「カンジダ肺炎なんて聞いたこと無いし、グルカン上がってるなら、ヤバそうなニューモシスチスしか選べないじゃん」でいいと思います。

    【参考問題】
    まず(109B51)が解けるか確認してください。連問です。↓
    109B50

    同様の内容ですが、(108A52)です。
    りんご医学生様の最初の疑問であったサイトメガロウイルス肺炎とニューモシスチス肺炎の鑑別の参考になれば幸いです。
    108A52

    以上を踏まえて、(110D57)を解いてみると味わい深いです。
    110D57

コメントを投稿する

ログインするとコメントを投稿することができます。

  • 問題参照 111D32

    6か月の乳児。呼吸不全のため来院した。生後5か月から咳嗽が出現しており、昨日から多呼吸も出現するようになったため救急外来を受診した。身長66.5cm、体重5.3kg。体温37.2℃。脈拍180/分、整。血圧88/52mmHg。呼吸数50/分。SpO2 86%(room air)。咽頭は発赤を認めないが、口腔粘膜に鵞口瘡を認める。心音に異常を認めない。両側の胸部にびまん性にfine cracklesを聴取する。血液所見:赤血球403万、Hb 10.4g/dL、Ht 31%、白血球2,300(好中球64%、好酸球1%、好塩基球1%、単球7%、リンパ球27%)、血小板37万。血液生化学所見:総蛋白6.1g/dL、IgG 152mg/dL(基準440〜880)、IgA 5mg/dL(基準31〜77)、IgM 13mg/dL(基準19〜55)。免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL、β-D-グルカン26pg/mL(基準10以下)。人工呼吸管理を開始し、胃管と中心静脈カテーテルを挿入した。胸部エックス線写真(A)と肺野条件の胸部CT(B)とを別に示す。

    考えられる原因微生物はどれか。

    • a カンジダ
    • b リステリア
    • c クラミジア
    • d ニューモシスチス
    • e サイトメガロウイルス
  • 関連トピック