106D44、胸部異常陰影精査目的で来院の69歳男性が、CEA上昇・擦過細胞診クラスVで腺癌と診断された症例です。
CT画像から腫瘍径<3cm・胸膜浸潤は±だと読み取りました。また「所属リンパ節転移と遠隔転移とを認めなかった」とのことから、Stage I or Stage IIaと診断させ、正答は手術(「縦隔リンパ節郭清を伴う右肺上葉切除術」)になっているものと考えました。肺機能検査や心電図検査、一般血液検査も施行済で、きっと耐術能にも問題ないと念押しされているんだと思います。
…ということは分かったのですが、
本文最後にわざわざ「左第一肋軟骨の石灰化を認めた」との所見が記載されているのがどうしても気になり、「これは骨メタとかそういうのなのでは…??」と誤答を選択してしましました。この所見の記載の背景には何か意図があるのでしょうか?
本文全てが意味のある情報ではなく、国試でも実臨床のようにノイズ的な情報も混ざっているものなのでしょうか?
皆さんどう対処されてますか~?
肋軟骨の石灰化は、高齢者に限らずみられる変化ではあるが、高齢者ではほぼすべてにみられる変化である。特に第一肋軟骨の石灰化は25歳以上では必発であるとされる。(日獨医報 第5巻 第4号 2007)
ということみたいです。。
僕自身はスルーしてしまっていた記載でしたので、勉強になりました!
加齢による正常な変化?を見分けるのは難しいですが、老年病に関する出題が増えている近年の国家試験では、異常にみえて実は高齢者では正常だよ!という記載も増えていくのかもしれませんね(>_
本問の「左第一肋軟骨の石灰化」は肋軟骨と胸骨の接合部に見られる不整な石灰化による陰影で、高齢であることからも加齢に伴う偽病変の結節である可能性が高いと思われます。
これは胸部CTが施行されることの多い偽病変の一つで、「student tumor」などとも呼ばれるそうです。
と、偉そうに書いてみましたが私も先日ポリクリで放射線診断科を周った時に知っただけなので大半の受験生はそんなことまで覚えていないと思います。
本問においては
①「精査の結果、所属リンパ節転移と遠隔転移とを認めなかった」という文言がある
②骨メタに関する情報(ex.胸痛等)がない
③左肺の石灰化に関するCTスライドが提示されていない
④石灰化という事象だけなら癌に限らずも聞くことは多い(ex.血管内の石灰化)ので、必ずしも病的なものではないのかもと推測する。
などから、総合的に左肺は今回関係のない病変なのかなと推測できたらいいのかなと思いました。
ご参考までにしてみてください。
【参考文献】
やさしイイ胸部画像教室第1版 p73
http://www.e-clinician.net/vol52/no545/pdf/sp54504.pdf
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