歴史的にアドレナリン注射剤の添付文書では、「【局所麻酔薬添加時】耳、指趾又は陰茎の麻酔を目的とする患者への投与は壊死状態になるおそれがあるため禁忌」と禁忌設定されていました。しかしながら、2021年2月に厚労省より以下のような文書が公開されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000748597.pdf
(リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤の伝達麻酔・浸潤麻酔における禁忌「耳又は指趾の麻酔を目的とする患者」等に係る「使用上の注意」の改訂について)
要旨を簡単にまとめると、
・耳への投与で壊死状態になったとの報告は国内外の文献において認められない
・大規模研究において手指の壊死等の合併症は認められなかった
→よって、「耳、指趾」は禁忌設定を外す。
というものです。
注意点として、
①陰茎の禁忌は残存。
②リドカイン注射液以外の局所麻酔薬に添加して用いる場合には依然として、「耳、指趾又は陰茎に投与しないこと」という注意書きが残っている。
③リドカインであっても、複数の指趾の場合や小児の場合には慎重投与、など細かい条件がついている。
の3点を挙げておきます。
気になるのは未来のCBTや国試での出題についてですが、私の知る限り、本知識が国試で最後に出題されているのは98回と20年も昔です(参考問題として本トピックに紐付いている106E25では選択肢eで「アドレナリンの添加によって麻酔薬の作用時間が延長する」がマルになっているに過ぎず、「耳、指趾又は陰茎に投与しないこと」の件には触れられていません)。
今回の解除を受け、敢えて「リドカインの場合に限り、成人の1本だけの指先への添加はOK」的な重箱のスミをつつく問題が出る可能性を受験生各人がどこまで想定するか、ですが、個人的には(専門医レベルならまだしも)学生のうちから敢えてそこまで細かい対策をする必要性は低いかな、という認識です。
つまり、従来どおり「袋小路的なところに局所浸潤麻酔をするときにアドレナリン添加するのは怖いな」くらいの理解をしておけば各種試験で大怪我はしないでしょう。
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