大腸がんの頻度について、テキストにはS状結腸が最多、次点が直腸、との記載があります。
しかし、大学の授業や調べてみた時、直腸が最多、S状結腸が次点、となっております。
どちらで覚えるべきでしょうか?
下記資料の項目10「大腸がん検診全国集計成績:男女合計」を参照ください。
https://www.jsgcs.or.jp/files/uploads/2019zenkoku_daityou_tuiseki.pdf
総数にて直腸(R)が1138、直腸S状部(Rs)が503、S状結腸(S)が1633とあります。おそらくここで直腸S状部(Rs)を別項目としてカウントするか(その場合、第1位がS状結腸(S)、第2位が直腸(R))、それとも直腸S状部(Rs)を直腸(R)に加算して、1138+503=1641と考えるか(その場合、僅差ですが第1位が直腸(R)、第2位がS状結腸(S))の捉え方の違いなのかと存じます。むろん、講義内の解剖生理では直腸S状部(Rs)は直腸(R)の一部として解説しておりますゆえ、後者の捉え方としますとご指摘の通り、直腸(R)が最多になるのですが、各種統計は統計ごとのクセのようなものがあり、本統計では直腸S状部(Rs)を独立したものとして捉えているのだと思います。
類例として公衆衛生の頻出ポイントである、日本人の死因が挙げられます。死因第2位の心疾患には「高血圧性を除く」、第5位の肺炎には「誤嚥/間質性肺炎を除く」という注意書きがあります。
このように各種統計は先人が古く昔から行ってくる中で、歴史的背景や特殊事情により特徴がありますので、それを認識の上、尊重していく必要があるということをご理解ください。
結論として、どちらの捉え方が正しいか、誤っているか、という線引をすることはできません。国家試験などの各種試験で問われた際に①「直腸(直腸S状部を含む)」と提示されるか、②「直腸(直腸S状部除く)」と提示されるか、それとも③「直腸」とのみ提示されるか、により回答スタンスが変わってくるポイントかと存じます。③でしたら「悪問」となり、受験生にとっては酷な出題となるでしょう(それでも強引に採点対象となる可能性と、不適切問題として採点除外となる可能性があり、厚労省の判断によりますゆえ、どうなるかはわかりません)。
いろいろと長文になってしまいましたが、もうこのレベルになってしまうと、「どう覚えるべきか、なんとも言いようがない」というのが本音です。1つ例題を以下で見てみてください。
116C21
上記の選択肢dは子宮頸がんに上皮内がんを含めれば正しいのですが、含めないと誤りになってしまいます。出題者側からは何も断り書きがない不親切な問題ですが、適正問題として採点対象となりました。理不尽以外何者でもありませんが、これが国試ですので、そういうものとして受け入れるしかありません。消去法等を総合的に駆使して、回答にアプローチするしかないパターンと言えます。その結果、正答率は45%。基本的に正答率が60%を切った問題はすべて不正解でも国試は合格できますので、正答率45%は確実に捨て問です。
また、冒頭でお示ししたリンクは2019年単年のデータであり、たとえ「直腸(直腸S状部を含む)」と考えても1641と1633の僅差である以上、2020年、2021年、2022年..... と追っていけば、順位が逆転する可能性もあります。もちろん例えば2021で逆転した後、2023でさらに逆転される可能性もあるため、油断できません。どうしても気になってしまうのであれば、2019年、2020年、....とご自身が国試を受験されるタイミングまでに公開されている最新統計をすべて覚えてから本番に臨むこととなります。(本事項にかかわらずすべての医学知識に関して言えることですが)そこまでの労力を払うべき対象か否か、を受講生各人が判断いただけますと幸いです。
私個人が受験生でしたら、本件については「気にしない(ぶっちゃけどちらでもよいのでスルーする)」と思います。
大学の講義でそのように話されていたのであれば、その先生が作る可能性のある試験では講義どおりに回答し、国試本番では消去法等で総合的に望めば大丈夫でしょう。もっと言えば、正直その知識が1つの試験内で2回以上出る可能性は極めて低いため、「1問くらい間違ってもいいか」くらいのスタンスで肩の力を抜いて臨むと思います。試験ではたくさんの問題が出ますので、数問間違えたところで合否には影響ありません。
「もしかしたら、その1問で不合格になるかも?」と不安になるかもしれませんが、だったら不確実な1問ではなく、もっと確実にとれる問題が大量にあるでしょうから、そちらを狙いに行きます。医学範囲は膨大ですので、他に時間を費やすべき事項が五万とあるでしょう。
もしまだお読みになっていないようであれば、参考までに以下のページも読んでみてください。
https://www.medu4.net/latest/
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