118D71

72歳の男性。咳嗽と食思不振を主訴に来院した。約1か月前から咳嗽と食思不振が出現し改善しないため受診した。1か月間で体重が3kg減少している。意識は清明。身長168cm、体重62kg。体温37.2℃。脈拍92/分、整。血圧126/82mmHg。呼吸数16/分。SpO2 94%(room air)。皮膚に異常を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は両側肺底部で吸気終末のfine cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、圧痛はなく、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。尿所見:蛋白2+、糖1+、ケトン体(-)、潜血3+。血液所見:赤血球433万、Hb 12.9g/dL、Ht 41%、網赤血球1.2%、白血球14,400(好中球78%、好酸球1%、単球8%、リンパ球13%)、血小板33万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン0.6mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 247U/L(基準124~222)、ALP 111U/L(基準38~113)、CK 32U/L(基準59~248)、尿素窒素36mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、血糖138mg/dL、HbA1c 6.3%(基準4.9~6.0)。免疫血清学所見:CRP 11mg/dL、β-D-グルカン2.2pg/mL(基準10以下)、リウマトイド因子46IU/mL(基準15以下)、抗核抗体陰性、MPO-ANCA 122U/mL(基準3.5未満)、PR3-ANCA陰性。腹部超音波検査で腎尿路系に異常を認めない。胸部単純CTを別に示す。
この患者できたしやすいのはどれか。2つ選べ
心筋炎
肺胞出血
後腹膜線維症
自己免疫性肝炎
急速進行性糸球体腎炎

解答: b,e

118D71の解説

【ポイント】
MPO-ANCA高値が示されているため、顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉ないし好酸球性多発血管炎性肉芽腫症〈EGPA〉を疑う。気管支喘息の既往や好酸球・IgEの上昇がみられていないため、MPAが濃厚。以上を前提に、再度本文を確認し、矛盾がないかを担保したい。両側肺底部でfine cracklesを聴取しているのは間質性肺炎の合併(これは提示された胸部単純CTで両側性に網状影がみられていることからも分かる)。尿蛋白2+、尿糖1+、尿潜血3+、クレアチニン1.3mg/dLは腎障害を示唆する。以上、肺と腎をメインとした障害がみられており、やはりMPAに矛盾しない。

【選択肢考察】
a EGPAでは好酸球性心筋炎を合併することがある。
b 正しい。MPAでは肺胞出血がみられる。
c 後腹膜線維症はIgG4関連疾患の合併症として有名。
d 自己免疫性肝炎〈AIH〉は原発性胆汁性胆管炎〈PBC〉やSjögren症候群、慢性甲状腺炎〈橋本病〉に合併する。
e 正しい。MPAには急速進行性糸球体腎炎〈RPGN〉を合併しやすい。

正答率:94%

テーマ:顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の合併症

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