118D60

56歳の女性。頭痛を主訴に来院した。10年前から高血圧症でカルシウム拮抗薬を内服している。2年前の冬から両手指が蒼白になることに気づいた。6か月前から両手指の腫れが出現した。2週間前から頭痛が出現し持続したため受診した。意識は清明。身長165cm、体重52kg。体温36.5℃。脈拍100/分、整。血圧176/102mmHg(1か月前は120/80mmHg)。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。手指から前腕まで皮膚硬化を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両下腿に圧痕性浮腫を認める。神経診察で異常を認めない。尿所見:蛋白1+、潜血1+。血液所見:赤血球406万、Hb 10.9g/dL、Ht 40%、網赤血球1.2%、白血球4,300(好中球69%、好酸球1%、好塩基球1%、単球8%、リンパ球21%)、血小板15万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 197U/L(基準124〜222)、γ-GT 32U/L(基準9〜32)、CK 122U/L(基準41〜153)、尿素窒素40mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL(1か月前は0.7mg/dL)、Na 139mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 97mEq/L、血漿レニン活性8.6ng/mL(基準1.2〜2.5)。免疫血清学所見:CRP 0.5mg/dL、抗核抗体160倍(基準20以下)、抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性。腹部超音波検査で腎尿路系に異常を認めない。
この患者に適切な治療薬はどれか。
β遮断薬
ループ利尿薬
グルココルチコイド
抗コリンエステラーゼ薬
アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬

解答: e

118D60の解説

【ポイント】
Raynaud現象(冬に両手指が蒼白)、両手指の腫脹、皮膚硬化、RNAポリメラーゼIII抗体陽性といった記載から全身性硬化症〈SSc〉(強皮症)を考える。血圧が176/102mmHgと高度上昇しており、尿蛋白や尿潜血が陽性となっていること、クレアチニンが1.8mg/dL(1か月前は0.7mg/dL)と急激に上昇していること、などから強皮症腎クリーゼを考える。

【選択肢考察】
a 降圧作用はあるも、強皮症腎クリーゼに対する治療薬としては第一選択にならない。
b 確かに浮腫がみられてはいるも、強皮症腎クリーゼに対する治療薬としては第一選択にならない。
c グルココルチコイドの副作用に高血圧があるため、本患者には適さない。
d 重症筋無力症〈MG〉に用いられる。
e 正しい。強皮症腎クリーゼに対する第一選択薬である。

正答率:90%

テーマ:全身性硬化症〈SSc〉の治療薬

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