118C72

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
78歳の男性。意識混濁のため救急車で搬入された。
現病歴:8年前の健康診断で高血糖を指摘されたが、そのままにしていた。半年前から体重が10kg以上減少した。口渇を自覚し疲れやすくなったため、ジュースや栄養ドリンクをよく飲むようになった。2日前から微熱と倦怠感の訴えがあり、一日中ベッドで横になっていた。本日、家族の呼びかけに応答しなくなったため家族が救急車を要請した。
既往歴:25歳時に肝炎。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:長男が糖尿病で治療中である。
現 症:意識レベルはJCS II-10。身長168cm、体重51kg。体温37.2℃。心拍数92/分、整。血圧100/64mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。対光反射は両側ともに迅速である。咽頭は腫脹や発赤を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音を聴取しない。腱反射は低下している。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖4+、ケトン体(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球552万、Hb 15.0g/dL、Ht 48%、白血球10,600、血小板35万。血液生化学所見:総蛋白8.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 38U/L、ALT 40U/L、LD 208U/L(基準124~222)、ALP 112U/L(基準38~113)、γ-GT 84U/L(基準13~64)、アミラーゼ120U/L(基準44~132)、CK 162U/L(基準59~248)、尿素窒素42mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL、尿酸10.8mg/dL、血糖936mg/dL、HbA1c 13.0%(基準4.9~6.0)、総コレステロール262mg/dL、トリグリセリド280mg/dL、血清総ケトン体150μmol/L(基準130以下)、Na 137mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 102mEq/L。CRP 0.5mg/dL。12誘導心電図で異常を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比46%。
この患者で認める可能性の高い身体所見はどれか。
眼球陥凹
手指振戦
下腿の圧痕性浮腫
呼気のアセトン臭
足母趾基部の発赤腫脹

解答: a

118C72の解説

【ポイント】
高齢男性の意識混濁。「血糖936mg/dL、HbA1c 13.0%」より糖尿病の診断はもちろん、血糖上昇による昏睡に至っている可能性が高いと判断する。尿糖4+なのに対し、ケトン体が陰性である(血清総ケトン体も軽度上昇に留まっている)ことから糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉ではなく、高血糖高浸透圧症候群〈HHS〉を考える。

【選択肢考察】
a 正しい。脱水により、眼球陥凹が出現する。
b 低血糖発作などでみられる。
c ネフローゼ症候群などでみられる。
d DKAなどでみられる。
e 痛風発作でみられる。

正答率:17%

テーマ:高血糖高浸透圧症候群〈HHS〉の身体所見

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