117F68

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
76歳の女性。歩行障害を主訴に来院した。
現病歴:6年前から左上肢の動かしにくさが出現し、4年前から歩くのが遅くなった。4年前から自宅近くの診療所でレボドパ〈L-dopa〉を処方され症状は改善した。1年前から内服薬の効果が持続しなくなり、歩行困難が進行した。半年前から、歩行中に足が止まってしまうことがあり、2回転倒したため専門外来を受診した。
既往歴:脂質異常症でスタチンを内服している。
生活歴:喫煙歴、飲酒歴はない。転倒しないようにほとんど外出しない。室内のトイレ歩行などの日常生活動作は自立している。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長158cm、体重45kg。体温36.2℃。脈拍64/分、整。血圧110/60mmHg。胸腹部に異常を認めない。神経診察では仮面様顔貌、小声および摂食時のむせこみを認める。四肢筋強剛、動作緩慢を認める。筋力低下、感覚低下は認めない。
検査所見:血液所見:赤血球340万、Hb 11.2g/dL、白血球6,300、血小板13万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン4.5g/dL、総ビリルビン0.2mg/dL、AST 24U/L、ALT 18U/L、LD 160U/L(基準120~245)、γ-GT 41U/L(基準8~50)、CK 58U/L(基準30~140)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖98mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 0.2mg/dL。
今回、撮像したドパミントランスポーターSPECT(A)と123I-MIBG交感神経心筋シンチグラム(B)を別に示す。
診断はどれか。
Parkinson病
多系統萎縮症
進行性核上性麻痺
大脳皮質基底核変性症
薬剤性Parkinson症候群

解答: a

117F68の解説

【プロセス】
①76歳の女性
②6年前から左上肢の動かしにくさ→4年前から歩くのが遅くなる→半年前から歩行中に足が止まってしまう&転倒
③4年前から自宅近くの診療所でレボドパ〈L-dopa〉を処方され症状は改善
④1年前から内服薬の効果が持続しなくなった
⑤仮面様顔貌、小声および摂食時のむせこみ、四肢筋強剛、動作緩慢
⑥ドパミントランスポーターSPECT(A)にて線条体の取り込み低下(dot patternと呼ばれる小型化・円形化)
123I-MIBG交感神経心筋シンチグラム(B)では正常対照と比べ、心臓領域の集積低下
☞高齢者(①)にみられた運動障害(②)。症状はさらに⑤で延べられているが、これらはParkinson病を考えさせる。③の処方薬、④のwearing-off現象、⑥⑦の画像所見も矛盾しない。

【選択肢考察】
a 正しい。上記の通り。
b 多系統萎縮症〈MSA〉では自律神経症状(起立性低血圧など)が前面に出やすい。また、L-dopaは最初から効きにくく、123I-MIBG交感神経心筋シンチグラムでの集積低下もない。
c 進行性核上性麻痺〈PSP〉では頸筋の緊張亢進や眼球運動障害がみられる。また、L-dopaは最初から効きにくく、123I-MIBG交感神経心筋シンチグラムでの集積低下もない。
d 大脳皮質基底核変性症〈CBD〉では症状の左右差や肢節運動失行、他人の手徴候などが特徴的。また、L-dopaは最初から効きにくく、123I-MIBG交感神経心筋シンチグラムでの集積低下もない。
e 薬剤性Parkinson症候群の原因となりうる薬剤の内服歴がない(スタチンは原因とならない)。また、ドパミントランスポーターSPECTと123I-MIBG交感神経心筋シンチグラムに異常は認めない。

正答率:89%

テーマ:【長文1/3】Parkinson病の診断

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