117C56

85歳の男性。尿量の低下を主訴に来院した。1年前から断続的に無症候性肉眼的血尿がみられたが、数日程度で消退していたため放置していた。1週間前から倦怠感が強くなり、尿量が低下したため受診した。喫煙は20歳から30本/日を60年間。5年前から禁煙している。飲酒は機会飲酒。家族歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長162cm、体重52kg。体温36.4℃。脈拍80/分、整。血圧120/76mmHg。呼吸数16/分。腹部は平坦で、圧痛を認めない。下肢に浮腫を認める。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血3+、沈渣に赤血球100以上/HPF、白血球1~4/HPFを認める。血液所見:赤血球285万、Hb 8.5g/dL、Ht 29%、白血球5,500、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 26U/L、ALT 15U/L、LD 136U/L(基準120~245)、尿素窒素66mg/dL、クレアチニン5.1mg/dL、尿酸5.8mg/dL、血糖93mg/dL、Na 134mEq/L、K 5.8mEq/L、Cl 98mEq/L。腹部超音波検査で両側の水腎症と尿管拡張、膀胱内に腫瘤を認めた。腹部単純CT(A、B)を別に示す。
直ちに行うべき治療はどれか。
血液透析
腎瘻造設術
尿道カテーテル留置
膀胱瘻造設術
利尿薬投与

解答: b

117C56の解説

【プロセス】
①85歳の男性
②1年前から断続的に無症候性肉眼的血尿(潜血3+&沈渣に赤血球100以上/HPF)
③1週間前から倦怠感が強くなり、尿量が低下
④喫煙は20歳から30本/日を60年間
⑤クレアチニン5.1mg/dL
⑥腹部超音波検査で両側の水腎症と尿管拡張、膀胱内に腫瘤
⑦腹部単純CTではAにて両側腎盂の拡張を、Bにて膀胱内の腫瘍を同定可能
☞①②④からは尿路系の悪性腫瘍をまず疑いたい。③からは進行も予想される。⑥⑦より膀胱癌が両側尿管口を巻き込み、水腎症、そして腎後性腎不全(⑤)を呈していると分かる。

【選択肢考察】
a 血液透析によって腎不全による血液データは解消されるかもしれないが、根本的な解決策になっていない。まずは尿が排泄できない現状を打破する手立てを考慮すべきだ。
b 正しい。両側尿管口が閉塞してしまっている以上、それより上流である腎から尿の逃げ道を作る必要がある。
c 膀胱まで尿が到来しにくい状況となっているわけで、尿道カテーテルは無効。
d 膀胱まで尿が到来しにくい状況となっているわけで、膀胱より上流でのうっ滞解除方法が要求される。
e 利尿薬投与により尿産生が亢進し、水腎症が悪化する危険性がある。

正答率:48%

テーマ:膀胱内腫瘍による両側水腎症に直ちに行うべき治療

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