117A57

58歳の男性。早朝に出現する胸痛の精査のため入院となった。約6か月前から労作とは関連なく、早朝に出現することが多い前胸部痛を自覚するようになった。胸痛発作時に自宅近くの診療所で処方されたニトログリセリンの使用で症状が軽快した。喫煙は20本/日を38年間。飲酒はビール500mL/日。意識は清明。身長170cm、体重83kg。脈拍80/分、整。血圧138/90mmHg。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球440万、Hb 16.0g/dL、Ht 48%、白血球7,800、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、AST 30U/L、ALT 33U/L、LD 250U/L(基準120~245)、CK 180U/L(基準30~140)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、HDLコレステロール50mg/dL、LDLコレステロール150mg/dL。心筋トロポニンT迅速検査陰性。12誘導心電図と胸部エックス線写真に異常を認めなかった。冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄を認めなかったため、引き続き、予防的な一時的ペースメーカーを心腔内に留置した後、アセチルコリンを左冠動脈に注入したところ、心電図の胸部誘導にST上昇が出現し、胸痛を訴えた。このときの冠動脈造影像(A)を別に示す。ニトログリセリンを左冠動脈に注入したところ、胸部症状は消失し、心電図も正常化した。このときの冠動脈造影像(B)を別に示す。
この患者への指導で適切でないのはどれか。
禁煙
節酒
β遮断薬の服薬
精神的ストレスの回避
カルシウム拮抗薬の服薬

解答: c

117A57の解説

【プロセス】
①早朝に出現する胸痛
②労作とは関連ない
③胸痛発作時にニトログリセリンで症状が軽快
④LDLコレステロール高値
⑤12誘導心電図と胸部エックス線写真に異常なし
⑥冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄を認めない
⑦予防的な一時的ペースメーカーを心腔内に留置
⑧アセチルコリンの左冠動脈注入にてST上昇&胸痛
⑨冠動脈造影像(A)に左前下行枝〈LAD〉と左回旋枝〈LCX〉の閉塞
⑩ニトログリセリンの左冠動脈注入にて胸部症状消失&心電図も正常化
⑪冠動脈造影像(B)では閉塞していた冠動脈が拡張して復している
☞③④より虚血性心疾患を考えるが、②より労作性狭心症は否定され、⑥からは器質的な冠動脈狭窄も否定される。①⑤⑩⑪からは一過性の変化を疑うが、⑧⑨から冠攣縮性狭心症〈異型狭心症〉を考えたい。なお、冠攣縮性狭心症にアセチルコリン負荷をする際には、医原性に冠動脈狭窄による合併症(右冠動脈攣縮による房室ブロックなど)が惹起されうる。これを想定して⑦が行われる。

【選択肢考察】
a 喫煙は本疾患のリスクである。
b 飲酒は本疾患のリスクである。
c 誤り。β遮断薬は冠動脈攣縮を惹起することがあり、病態を悪化させかねない。
d 精神的ストレスは本疾患のリスクである。
e カルシウム拮抗薬は本疾患の治療に用いられている。

正答率:95%

テーマ:冠攣縮性狭心症〈異型狭心症〉への指導

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