116E49

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

60歳の女性。背部痛と体重減少を主訴に来院した。
現病歴:1か月前から背部痛を自覚していた。市販の外用薬を貼ったりマッサージを受けたりしていたが改善しないため来院した。この3か月間で体重が3kg減少している。
既往歴:55歳時から高血圧症で降圧薬を服用している。
生活歴:夫と2人暮らし。
家族歴:父が高血圧症、母が高脂血症。
現 症:意識は清明。身長155cm、体重45kg。体温36.2℃。脈拍96/分、整。血圧126/80mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は蒼白で、眼球結膜に黄染を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は膨満しており、波動を認める。聴診で腸雑音は減弱している。肝・脾を触知しない。両下腿に軽度の浮腫を認める。腱反射は正常である。感覚系に異常を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球401万、Hb 10.5g/dL、Ht 31%、白血球4,500、血小板29万。血液生化学所見:総蛋白5.9g/dL、アルブミン2.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 24U/L、ALT 22U/L、LD 363U/L(基準120~245)、ALP 146U/L(基準38~113)、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、血糖93mg/dL、CEA 10.6ng/mL(基準5以下)、CA19-9 352U/mL(基準37以下)。腹部超音波検査および腹部CTで膵体部に径10cmの腫瘤、肝両葉に径1~2cmの多発する腫瘤陰影を認める。腹水の貯留を認める。

担当医が今後の治療方針を判断するために最も適切な情報はどれか。

患者の体験記
診療ガイドライン
研究会での症例報告
製薬会社のホームページ
医師が発信するソーシャル・メディア

解答: b

116E49の解説

【プロセス】
①背部痛と体重減少
②CEAとCA19-9高値
③膵体部に径10cmの腫瘤
④肝両葉に径1~2cmの多発する腫瘤陰影
⑤腹水の貯留
☞膵癌(③)とその肝転移(④)、そして腹膜播種によると思われる癌性腹水(⑤)がみられている。①②も症候として矛盾しない。すでにstage IVであり、治療方針の設定と患者への告知を慎重に行う。

【選択肢考察】
a 一般人の体験談であり、エビデンスに乏しい。なお、「患者の体験記」という表現を「患者の希望」と誤解し、選んでしまったものが僅かながらいた。もちろん治療方針の決定に際しては患者本人の希望が最大限尊重されるべきだ。しかしながら、その前提となるのは医学的なエビデンスによりバックアップされた正しい情報であり、この情報から導き出された治療方針を受け入れるか否か、の時点で患者の自己決定権が重要となる。
b 正しい。ガイドラインにはさまざまなエビデンスレベルの研究から導出された事項が系統的に検索・評価されている。これを参考に、本患者に最適な治療方針を設計する。
c 特定の患者についての情報にすぎず、自身の患者に当てはまるか否かは定かでない。
d 一般の方向け、医療者向け、などさまざまな情報が挙げられているが、基本は診療ガイドライン等の引用であることが多い。原典にあたるべきだ。また、製薬会社という立場上、自社の開発した薬などがよく見えるように書かれていることもある。こうした利益相反〈COI〉の点からも注意が必要である。
e 医師個人の発信する情報であり、信憑性に乏しい。

正答率:97%

テーマ:【長文1/2】今後の治療方針を判断するための情報

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