116C60

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

82歳の女性。歩行困難のため救急車で搬入された。
現病歴:1か月前から倦怠感を訴えていた。前日の朝から食欲不振が出現し、午後になって2回嘔吐した。当日朝から落ち着きがなくなり、いつもと違う様子であった。その後、歩行困難と尿失禁を認め次第に呼びかけへの反応が悪くなったため家族が救急車を要請した。
既往歴:51歳時、子宮筋腫で子宮全摘術。58歳から高血圧症、慢性心房細動、脂質異常症のため自宅近くの医療機関に通院中でありカルシウム拮抗薬、β遮断薬、スタチン、ワルファリンを内服中である。2か月前から三叉神経痛に対しカルバマゼピンが開始となった。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。夫(83歳)、長男夫婦と同居。海外渡航歴はない。
家族歴:母が76歳時に脳梗塞を発症。
現 症:意識レベルはJCS III-100。身長152cm、体重58kg。体温36.2℃。脈拍92/分、不整。血圧162/98mmHg。呼吸数22/分。SpO2 99%(room air)。眼位は正位である。瞳孔径は両側3.0mmで、左右差を認めない。対光反射は両側とも迅速。胸腹部に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白2+、糖+、潜血(−)。血液所見:赤血球509万、Hb 15.9g/dL、Ht 41%、白血球8,700、血小板26万。血液生化学所見:総蛋白8.5g/dL、アルブミン5.2g/dL、AST 36U/L、ALT 20U/L、γ-GT 28U/L(基準8~50)、尿素窒素14.6mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸3.6mg/dL、Na 108mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 73mEq/L、Ca 10.0mg/dL、P 3.8mg/dL、随時血糖198mg/dL、TSH 2.28μU/mL(基準0.2~4.0)、ACTH 12.6pg/mL(基準60以下)、FT4 1.5ng/mL(基準0.8~2.2)、コルチゾール12.5μg/dL(基準5.2~12.6)。CRP 0.1mg/dL。尿浸透圧702mOsm/L(基準50~1,300)、尿Na 163mEq/L、尿K 68mEq/L、尿Cl 190mEq/L。

この患者の病態の原因はどれか。

レニン
インスリン
カテコラミン
バソプレシン
エリスロポエチン

解答: d

116C60の解説

【プロセス】
①倦怠感・食欲不振・歩行困難・尿失禁・意識障害(JCS III-100)
②2か月前から三叉神経痛に対しカルバマゼピン
③血中尿酸・Na・Cl値低下
④尿浸透圧正常
⑤尿NaとClは基準値内だが上限寄り
☞①はさまざまな原因が考えられる症候であり、高齢者であればなおさらだ。が、③(血が薄い)にも関わらず④⑤(尿中にはけっこう出ている)というギャップからはADH不適合分泌症候群〈SIADH〉を想起したい。②はSIADHの原因となる薬剤として有名だ。ゆえに原因としては抗利尿ホルモンであるバソプレシンが正解。

正答率:89%

テーマ:【長文1/3】ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉の病態の原因

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