116B40

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

76歳の男性。食欲低下と全身倦怠感を主訴に来院した。
現病歴:58歳時に高血圧症と診断され、内服加療を受けていた。5年前から尿蛋白1g/日以上が持続するようになり、腎機能も徐々に増悪してきていた。1週間前から食欲が低下し、全身倦怠感が強くなってきたため、外来通院中の病院を受診した。
既往歴:72歳時に狭心症で入院加療歴がある。
生活歴:喫煙歴は20歳から40本/日を56年間。飲酒は日本酒1合/日。
家族歴:母親が高血圧症で治療歴がある。
現 症:意識は清明。身長162cm、体重47kg。体温36.4℃。脈拍64/分、整。血圧146/92mmHg。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜に異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両下腿に圧痕性浮腫を認める。
検査所見:尿所見:蛋白3+、糖(−)、潜血(−)、1日尿蛋白3.3g/日。血液所見:赤血球292万、Hb 8.8g/dL、Ht 28%、白血球5,800、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.4g/dL、尿素窒素86 mg/dL、クレアチニン8.4mg/dL、eGFR 6mL/min/1.73m2、尿酸9.8mg/dL、血糖113mg/dL、Na 131mEq/L、K 7.2mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.8mg/dL。胸部エックス線写真で心胸郭比51%。
血液透析を開始するため右内頸静脈から透析用カテーテルを留置することとなった。超音波ガイド下にカテーテルを挿入中、患者の体動がみられ、胸が苦しいとの訴えがあった。

患者の意識と呼吸状態の確認とともにまず行うべきことは何か。

SpO2の確認
胸部造影CT
Dダイマー測定
フロセミド静注
ジアゼパム静注

解答: a

116B40の解説

【プロセス】
①76歳男性
②5年前から腎機能が徐々に増悪
③1週間前から食欲が低下し、全身倦怠感が強くなった
④eGFR 6mL/min/1.73m2
⑤血液透析を開始するため右内頸静脈から透析用カテーテルを留置
⑥カテーテルを挿入中、患者の体動がみられ、胸が苦しいとの訴え
☞①〜④より、慢性腎臓病〈CKD〉のG5、すなわち末期と分かる。⑤⑥からは透析用カテーテル挿入に伴う合併症を疑う。

【選択肢考察】
a 正しい。「胸が苦しいとの訴え」があり、呼吸状態とそれに伴う血中の酸素を評価することが第一となる。
b 息苦しい状況下でのCT検査実施はいわゆる「死のトンネル」現象をきたしかねない。
c 血栓塞栓を疑った場合に有効。
d 心不全等によるうっ血のある場合に有効。
e けいれん重積がある場合に有効。

正答率:99%

テーマ:【長文1/2】胸の苦しさを訴える患者にまず行うべきこと

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし