116A16

76歳の女性。高血糖と尿蛋白を指摘されて来院した。退職前の健診で血糖値が高めであることを指摘されていたが、そのままにしていた。60歳で退職後は健診を受診していなかった。退職後の3年間で体重が10kg増加した。既往歴に特記すべきことはない。姉に糖尿病がある。現在はひとり暮らしである。運動習慣はない。視力低下のために眼科を受診したところ、増殖性糖尿病網膜症と診断され、高血糖と尿蛋白も指摘されて紹介された。身長154cm、体重70kg。脈拍72/分、整。血圧142/80mmHg。胸腹部に異常を認めない。両下腿に軽度の圧痕性浮腫を認める。尿所見:蛋白2+、糖3+、潜血(−)。随時尿の尿蛋白/Cr比は1.2g/gCr(基準0.15未満)。尿沈渣に赤血球1~2/HPF、白血球1~2/HPF、円柱を認めない。血液生化学所見:総蛋白6.1g/dL、アルブミン4.2g/dL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、eGFR 72.3mL/分/1.73m2、随時血糖値201mg/dL、HbA1c 10.2%(基準4.6~6.2)、Na 142mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 100mEq/L、Ca 9.2mg/dL。抗GAD抗体陰性。尿蛋白の原因を調べるための腎生検は患者が希望しなかった。

本患者の蛋白尿の原因が糖尿病性腎症であることを最も示唆する所見はどれか。

姉の糖尿病歴
抗GAD抗体陰性
糖尿病網膜症の存在
随時血糖値>200mg/dL
尿蛋白/Cr比>1.0g/gCr

解答: c

116A16の解説

【プロセス】
①高齢女性
②高血糖と尿蛋白を指摘(蛋白2+、糖3+)
③3年間で体重が10kg増加
④増殖性糖尿病網膜症と診断済
⑤随時尿の尿蛋白/Cr比は1.2g/gCr
⑥随時血糖値201mg/dL、HbA1c 10.2%
⑦抗GAD抗体陰性
☞①⑥⑦より2型糖尿病と考えられる。④⑥より状態は好ましくない。⑤からは蛋白尿の存在が読み取れ、②③からは糖尿病性腎症により体内の水分貯留が示唆される。

【選択肢考察】
a 家族歴は糖尿病リスクの1つではあるが、これをもって糖尿病性腎症と決めるわけではない。
b 1型ではなく2型であることが示唆されるが、糖尿病性腎症を示唆するわけではない。
c 正しい。糖尿病網膜症が存在する段階ではすでにコントロールが思わしくなく、全身の合併症が進行している可能性が高い。そのため、糖尿病性腎症の存在も高率に疑われる。
d 糖尿病自体の診断には有効であるが、これをもって腎症と言えるわけではない。
e 尿蛋白が多いことを示す。たしかに腎と関連する指標ではあるも、糖尿病以外の原因で尿蛋白が漏出している可能性もあるため、糖尿病性腎症とは言い切れない。

正答率:79%

テーマ:糖尿病性腎症であることを示唆する所見

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