115D70

日齢0の女児。妊娠初期の妊婦健康診査で妊娠確定後、妊婦健康診査を受診していなかった。陣痛が発来したため前医を受診し、低出生体重のため救急車で搬入された。在胎39週1日、体重2,010g、Apgarスコアは7点(1分)、8点(5分)で出生した。体温36.7℃。心拍数120/分。血圧60/35mmHg。呼吸数40/分。SpO2 100%(room air)。活気不良、啼泣は弱い。第二肋間胸骨左縁にLevine 2/6の連続性雑音を認めた。血液所見:Hb 18.7/dL、白血球10,800、血小板7.9万、IgM 350mg/dL(基準0~20)であった。妊娠初期に母親は微熱と発疹を認めたが医療機関は受診しなかったという。

母親が妊娠中に罹患した可能性が高い疾患はどれか。2つ選べ

水痘
梅毒
風疹
伝染性紅斑
A群β溶連菌感染症

解答: b,c

115D70の解説

【プロセス】
①日齢0の新生児
②低出生体重(体重2,010g)
③第二肋間胸骨左縁に連続性雑音
④IgM高値
⑤妊娠初期に母親は微熱と発疹
④から胎内感染があったと考えられる。おそらくは⑤が児に経胎盤感染し②や③(心奇形)を生じせしめたのだろう。⑤の「発疹」という記載からはTORCH症候群を想定することとなる。
※正答率が50%を切る割れ問。各社予備校の解答速報も誤答したところが多かった。結局のところ出題者は「妊娠中の感染症で胎児奇形ときたらTORCH症候群」という単純な知識を問うていたに過ぎないのだが、あれこれ考えすぎて水痘や伝染性紅斑を選んだ者が多数。「複雑に考えず素直に答えを選ぶべし!」という1つの教訓になる問題であった。


【選択肢考察】
a 水痘にかかった妊婦から生まれた子の1~2%程度に先天性水痘症候群が発症するという報告がある。が、これは海外のデータであり、日本では報告がない。「可能性が高い」という設問設定である以上、敢えて選択する必要はない。この事実を知らなかったところで、水痘はTORCH症候群に含まれていないため、選ぶのはそもそもためらわれる(OthersのOに含める、と考えてしまえば別だが、それを言い出すと何でもアリになってしまうため、原則Others=梅毒、とここでは考えることとする)。
b 正しい。TORCH症候群のO(Others)に含まれる代表格的存在。
c 正しい。TORCH症候群のRに該当する。
d 胎児水腫や児の赤芽球癆をみる。Hbの値からは否定的。
e 経胎盤感染することは稀で、万が一胎児が罹患しても奇形を呈したり、といった影響はほぼない。

正答率:48%

テーマ:TORCH症候群児の母親が罹患した可能性が高い疾患

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