115C72

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
80歳の男性。胸痛のため救急車で搬入された。
現病歴:昨日午後7時ころ夕食中に急に胸部絞扼感を感じた。胸痛は約30分持続したが自然に軽快し、その日は就寝した。本日朝6時、起床時に昨晩と同様の胸痛が出現した。昨夜より症状が強く動けない状態が持続し、その後呼吸困難も生じてきたため救急車を要請し、午前7時に救急搬送された。
既往歴:10年前から高血圧症で通院加療中。
生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は20本/日、60年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長155cm、体重60kg。心拍数108/分、整。血圧106/86mmHgで明らかな左右差を認めない。呼吸数20/分。SpO2 94%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。冷汗を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。心音はIII音ギャロップを呈しており、心尖部を最強点とするLevine 3/6の収縮期雑音を聴取する。呼吸音は両側中下胸部に湿性ラ音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。
検査所見:赤血球463万、Hb 13.2g/dL、Ht 40%、白血球9,800、血小板28万、総ビリルビン0.5mg/dL、AST 118U/L、ALT 32U/L、LD 320U/L(基準120~245)、CK 346U/L(基準30~140)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、血糖98mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。心筋トロポニンT迅速検査陽性。心電図は心拍数108/分の洞調律で、広範な誘導でST低下を認めた。

この患者の病態で正しいのはどれか。2つ選べ

左房圧は上昇している。
僧帽弁閉鎖不全がある。
心拍出量は増加している。
中心静脈圧は低下している。
副交感神経の緊張状態である。

解答: a,b

115C72の解説

【プロセス】
①高齢男性
②胸痛
③頸静脈怒張・ギャロップ両側中下胸部に湿性ラ音
④心尖部を最強点とする収縮期雑音
⑤心筋トロポニンT迅速検査陽性
⑥広範な誘導でST低下
①②⑤より急性心筋梗塞〈AMI〉を想起するのは容易であろう。⑥から非ST上昇型(STEMI)が考えやすい。これにより③の両心不全症状がみられている。④は僧帽弁逆流による雑音であり、僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉の存在が疑われる。

【選択肢考察】
a 正しい。左心不全徴候がみられており、左房圧の上昇が予想される。
b 正しい。上記の通り。
c AMIは心筋の虚血・壊死が起こる病態である。心拍出量が増加することはない。
d 頸静脈怒張がみられており、中心静脈圧は上昇が予想される。
e 冷汗や頻脈を認めており、交感神経の緊張状態が疑われる。

正答率:91%

テーマ:【長文1/3】非ST上昇型急性冠症候群〈ACS〉による急性心不全の病態

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