115C69

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
78歳の女性。胸部不快感を主訴に来院した。
現病歴:2週前から労作時に胸部の不快感を自覚するようになり受診した。
既往歴:61歳時に糖尿病、65歳時に高血圧症、高尿酸血症と診断され、内服加療中。76歳時に肺炎で入院加療を受けた。1年前から椎間板ヘルニアによる腰痛に対し鎮痛薬の処方も受けている。腰痛のため運動量の減少に伴い、最近は筋肉量の減少も指摘されていた。
生活歴:80歳の夫と2人暮らし。喫煙は24歳から20本/日を37年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父親が70歳時に心不全で死亡。
現 症:意識は清明。身長154cm、体重41kg。体温35.8℃。脈拍84/分、整。血圧142/88mmHg。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜に異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。胸骨左縁第3肋間を最強点とするLevine 2/6の収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。左足背動脈は触知が不良で冷感を認める。
検査所見:尿所見:蛋白2+、潜血(−)、糖(−)、尿蛋白1.5g/日。血液所見:赤血球362万、Hb 11.0g/dL、Ht 35%、白血球6,800、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.2g/dL、AST 20U/L、ALT 12U/L、LD 198U/L(基準120~245)、ALP 288 U/L(基準115~359)、CK 28U/L(基準30~140)、尿素窒素32mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、eGFR 37mL/分/1.73m2、尿酸8.2mg/dL、血糖118mg/dL、HbA1c 6.6%(基準4.6~6.2)、総コレステロール142mg/dL、Na 136mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.8mg/dL。12誘導心電図でII、III、aVF、V4-6誘導のST低下を認める。胸部エックス線写真で心胸郭比56%。
虚血性心疾患が疑われ、冠動脈造影検査の実施を検討することとなった。

この患者の腎機能をより正確に把握するために有用な指標はどれか。

尿中NAG値
尿蛋白/クレアチニン比
尿中β2-マイクログロブリン値
血液尿素窒素/血清クレアチニン比
血清シスタチンCによるGFR推算値

解答: e

115C69の解説

【プロセス】
①高齢女性
②2週前から労作時の胸部不快感
③糖尿病・高血圧症・高尿酸血症の既往
④喫煙歴
⑤腰痛に対して鎮痛薬の処方を受けている
⑥左足背動脈は触知が不良で冷感あり
⑦eGFR 37mL/分/1.73m2
⑧12誘導心電図でII, III, aVF, V4-6誘導のST低下
⑨心胸郭比56%
③④のような背景下で全身の動脈硬化がみられているのであろう(⑥からは閉塞性動脈硬化症〈ASO〉の合併も疑われる)。これにより冠動脈も狭小化し、虚血性心疾患(②⑧)、さらには心拡大(⑨)を呈しているものと思われる。⑦からは腎機能が読み取れ、①(加齢)や⑤(NSAIDか?)がその原因として考えられる。

【選択肢考察】
a 近位尿細管機能の評価に有用。
b 一日尿蛋白量の推定に有用。
c 近位尿細管機能の評価に有用。
d 腎前性や腎性といった急性腎障害の成因推定に有用。
e 正しい。通常のeGFRは血清クレアチニン値を計算に用いる。しかしながら本患者のように痩せ型の者では筋肉量が少なく、筋肉量の影響を受ける血清クレアチニン値の信憑性が今ひとつとなってしまう。血清シスタチンCによるGFR推定値は筋肉量の影響を受けないため、設問文通り「腎機能をより正確に把握する」ことが可能となる。

正答率:75%

テーマ:【長文1/3】腎機能を正確に把握する指標

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