115C36

32歳の経産婦(2妊2産)。1年前からの不正性器出血を主訴に来院した。病期Iの子宮頸癌と診断され、4週後に広汎子宮全摘術とリンパ節郭清術が予定された。予測出血量は800mLである。血液所見:赤血球390万、Hb 10.1g/dL、Ht 31%、白血球5,200、血小板30万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、AST 32U/L、ALT 29U/L、フェリチン5ng/mL(基準20~120)。血液型はAB型RhD(−)である。

現時点の対応として誤っているのはどれか。

鉄剤投与
自己血貯血
不規則抗体スクリーニング
赤血球液-LRとの交差適合試験
血液準備量について院内輸血部門と調整

解答: d

115C36の解説

【プロセス】
①子宮頸癌と診断
②4週後に広汎子宮全摘術を予定
③予測出血量800mL
④赤血球390万・Hb 10.1g/dL・Ht 31%
⑤フェリチン5ng/mL
⑥血液型はAB型RhD(−)
③からは大量出血が予想される。④の値はかろうじて10を超えているが、十分とは言えない。⑤より鉄の不足が予想される(④からMCV 79.5と算出され鉄欠乏性貧血が疑われる)。⑥からは我が国では稀な血液型であることが読み取れる。

【選択肢考察】
a 鉄欠乏が考えられるため、有効。
b 大量出血が予想され、かつ稀な血液型であるため有効。「ただでさえ貧血気味なのに血液を採取してよいの?」という質問をよくいただく選択肢なのだが、だからこそ少しずつ予め貯留しておく必要があるのだ。重度の貧血であれば担当医の判断により行わないこともある。この選択肢の兼ね合いからHbの値が10をギリギリ超えている設定になっているものと考えられる。
c 輸血の可能性がある手術患者ではルーチンで行われる。
d 誤り。交差適合試験は実際の輸血製剤と行うもの。ゆえに、現時点ではなく手術直前(具体的には術前72時間以内)に実施する。
e 稀な血液型であるため、事前にその準備量を院内輸血部門と調整しておくことは重要だ。

正答率:86%

テーマ:大量出血が予想される手術前の対応

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