115B35

68歳の女性。黄疸を主訴に来院した。2週前から倦怠感を自覚し、1週前に感冒症状があり市販の総合感冒薬を服用した。昨日、家族から眼の黄染を指摘されたため受診した。50歳台から2型糖尿病で内服治療中である。意識は清明。体温36.7℃。脈拍76/分、整。血圧136/80mmHg。呼吸数12/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右季肋部に肝を1cm触知する。血液所見:赤血球413万、Hb 13.8g/dL、Ht 41%、白血球8,300、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白7.1g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン5.9mg/dL、直接ビリルビン4.7mg/dL、AST 292U/L、ALT 356U/L、LD 577U/L(基準120〜245)、ALP 693U/L(基準115~359)、γ-GT 352U/L(基準8〜50)、アミラーゼ95U/L(基準37~160)、尿素窒素34mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、血糖118mg/dL、HbA1c 7.8%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール226mg/dL、トリグリセリド160mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 101mEq/L。免疫血清学所見:CRP 1.9mg/dL、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。

まず行うべきなのはどれか。

腹部造影CT
Coombs試験
腹部超音波検査
腫瘍マーカー測定
薬剤リンパ球刺激試験

解答: c

115B35の解説

【プロセス】
①高齢女性
②黄疸(直接ビリルビン優位)
③倦怠感のため1週前に総合感冒薬を服用
④右季肋部に肝を1cm触知
⑤AST, ALT, ALP, γ-GT高値
⑥クレアチニン上昇(糖尿病性腎症か?)
⑦CRP上昇
②より肝でのグルクロン酸抱合後の障害が考えやすい。③からは薬剤性肝障害も鑑別に挙がるが、出題者的には「倦怠感」に重きをおいて記載した可能性もある。④⑤からは肝〜胆道の障害が疑われる。⑦から炎症の存在もありうる。いずれにせよ情報が少ないため、さらなる検査を行うことになる。ファーストステップは肝硬変など肝自体のトラブルなのか、それとも胆管癌のような肝後性のトラブルなのか、の線引だ。

【選択肢考察】
a 腎障害があるため、造影CTは敬遠される。
b 自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉などに有効。溶血があれば間接ビリルビン優位の上昇となるはず。
c 正しい。侵襲無く、肝性か肝後性か、を判別可能。
d 悪性腫瘍の可能性もあるため、悪くはない。しかし、腫瘍マーカーには非常に多くの種類があるため、虱潰しに実施するわけにはいかない。まずは腫瘍があるか否か、だけでも見極めてから行いたいものだ。
e 薬剤アレルギーの検査として有効。③からは薬剤性肝障害も視野に入るのだが、まだ数ある可能性の1つに過ぎない。現時点で決め打ちするべきではない。

正答率:99%

テーマ:肝炎疑いの患者にまず行うべき検査

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