115A75

68歳の女性。意識低下のため救急車で搬入された。5日前から感冒症状が出現し、食欲不振と倦怠感のため定期内服薬が服用できていなかった。3日前から38℃台の発熱があり、自宅でうずくまっているところを家人が発見し救急車を要請した。既往歴として、2年前に非機能性下垂体腫瘍を経蝶形骨洞手術にて摘出されたが、残存腫瘍を指摘されていた。以後ヒドロコルチゾンとレボチロキシンを継続服用中であった。搬入時の意識レベルはJCS II-20。体温38.4℃。血圧80/46mmHg。心拍数122/分、整。呼吸数24/分。SpO2 94%(room air)。血液生化学所見:血糖65mg/dL、Na 121mEq/L、K 5.5mEq/L。

まず行うべき対応はどれか。3つ選べ

NSAIDの投与
生理食塩液の輸液
グルコースの点滴静注
ヒドロコルチゾンの静注
レボチロキシンの胃管を用いた投与

解答: b,c,d

115A75の解説

【プロセス】
①5日前から感冒症状
②2年前に非機能性下垂体腫瘍を摘出したが残存あり
③ヒドロコルチゾンとレボチロキシンを継続服用中
④食欲不振と倦怠感のため服用できず
⑤意識障害・発熱・血圧低下・SpO2低下
⑥低Na・高K血症
⑤⑥からは副腎皮質機能低下症が読み取れる。③④から考えるに、内服を中断したことにより副腎クリーゼを呈したものと考えられる。レボチロキシンは甲状腺ホルモンであるため、甲状腺機能低下症も合併している可能性が高い(食欲不振や意識障害、呼吸障害など)が、副腎クリーゼの症候とオーバーラップするところが多いためはっきりしない。幸いながら、甲状腺機能低下症については議論せずとも正答を導くことが可能な問題に設計されている。

【選択肢考察】
a 消炎鎮痛薬。発熱等、一部の症候への対症療法とはなりうるも、優先度は低い。
b 正しい。血圧低下と低Na血症があるため、生理食塩水の輸液は望ましい。
c 正しい。血糖値は65mg/dLとやや低めである。副腎クリーゼによりグルココルチコイド作用が減弱し、今後ますます血糖値が低下していく可能性がある。そのため、グルコースの点滴静注は行いたい。
d 正しい。副腎クリーゼにより不足している副腎皮質ステロイドを補いたい。
e 副腎クリーゼの際に、副腎皮質ステロイドを補うことなく甲状腺ホルモンを投与するのは禁忌。

正答率:82%

テーマ:副腎クリーゼの対応

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