114C69

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

66歳の男性。胸背部痛と左上下肢の筋力低下のため救急車で搬入された。

現病歴:本日午前11時、デスクワーク中に本棚上段から書類を取ろうと手を伸ばしたところ、激烈な胸背部痛が突然出現した。その後すぐに左片麻痺が出現し、さらに重苦しい胸痛と冷汗が出現したため、発症から30分後に救急車を要請した。

既往歴:2年前から高血圧症で通院治療中。

生活歴:妻と2人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。

家族歴:父親は脳出血のため86歳で死亡。母は胃癌のため88歳で死亡。

現 症:意識は清明。身長162cm、体重80kg。血圧78/62mmHgで明らかな左右差を認めない。脈拍108/分(微弱)、整。呼吸数18/分。SpO2 99%(room air)。頸静脈の怒張を認める。眼瞼結膜に貧血を認めない。心音はI音II音とも減弱しており、胸骨左縁第3肋間を最強とするII/IVの拡張期灌水様雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。左上下肢に不全片麻痺を認め、Babinski徴候は陽性である。

検査所見:心電図は、心拍数108/分の洞調律で、肢誘導および胸部誘導ともに低電位で、II、III、aVfにST上昇を認めた。ポータプル撮影機による仰臥位の胸部エックス線写真(A)及び6か月前に撮影された立位の胸部エックス線写真(B)を別に示す。胸部エックス線写真を見比べながら、研修医が指導医に所見や解釈を報告した。

適切なのはどれか。

「6か月前と比較して胃泡が多くなっています」
「本日の写真では下行大動脈が認められません」
「本日の写真では著しい気管の偏位が認められます」
「6か月前と心拡大の程度を比較するのは困難です」
「いずれの写真でもCPアングル〈肋骨横隔膜角〉は鋭なので胸水貯留はありません」

解答: d

114C69の解説

胸背部痛と左上下肢の脱力を主訴に搬送された高齢男性。血圧低下、頻脈、頸静脈の怒張を認め、胸部エックス線にて縦隔の拡大を認めることから急性大動脈解離を考える。また、胸骨左縁第3肋間に拡張期灌水様雑音を認めることから大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉の合併が疑われる。さらに頸静脈の怒張や心音減弱・心電図上の低電位は心タンポナーデを、心電図上でのST上昇は急性心筋梗塞〈AMI〉を、それぞれ合併している可能性を考えさせる。
a 増えているのは胃泡ではなく腸管ガスである。
b 下行大動脈は来院時のポータブル胸部エックス線写真で指摘可能である。
c 気管の著しい偏位は認めない。
d 正しい。6か月前の撮影条件は立位で、今回は仰臥位であるため心拡大の程度を単純に比較したり、評価したりすることはできない。
e 仰臥位にて液体は背側全体に貯留するため、正確にCPアングルの評価を行うことができない。

正答率:22%

テーマ:【長文1/3】6か月前と本日の胸部エックス線写真の比較から言えること

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