113D25

62歳の女性。呼吸困難を主訴に救急車で搬入された。数日前から風邪気味で、昨日から動くと息苦しいと訴えていた。今朝息苦しさが強くなったため家族が救急車を要請した。意識は清明。体温38.5℃。心拍数120/分、整。血圧86/46mmHg。呼吸数28/分。SpO2 88%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。心雑音はないが、心音は奔馬調律である。全胸部にcoarse cracklesを聴取する。胸部エックス線写真で右下肺野を優位とする両肺野浸潤影を認めた。気管挿管後ICUに入室し人工呼吸を開始した。血液所見:赤血球345万、Hb 11.4g/dL、Ht 34%、白血球12,800、血小板23万。血液生化学所見:総蛋白5.9g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 283U/L、ALT 190U/L、LD 392U/L(基準176~353)、尿素窒素13mg/dL、クレアチニン0.3mg/dL、CK 439U/L(基準30~140)、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉1,728pg/mL(基準18.4以下)。CRP 2.0mg/dL。12誘導心電図で前胸部誘導に陰性T波を認める。心エコー検査で左室はびまん性に壁運動が低下し、左室駆出率は30%。血行動態を把握するため肺動脈カテーテルを挿入した。

この患者の測定値と考えられるのはどれか。

心係数 平均右房圧 平均肺動脈圧 肺動脈楔入圧
(L/min/m2 (mmHg) (mmHg) (mmHg)
6.0 10 15 10
4.0 10 15 10
4.0 5 10 5
2.0 5 10 5
2.0 15 25 20

解答: e

113D25の解説

呼吸困難を主訴に救急車で搬入された62歳の女性。意識は清明だが、ショックバイタルであり酸素化も不良である。心音は奔馬調律で全胸部にcoarse cracklesを聴取し、胸部エックス線写真で右下肺野を優位とする両肺野浸潤影を認めることから肺炎契機に発症した急性心不全と考える。10L酸素投与下でも酸素化は不良であるため気管挿管と人工呼吸の開始は必須である。肝酵素の上昇は右心不全からのうっ血肝を来しているためであろう。
a〜e 心エコーにて壁運動の低下を認めることから心係数は低下し(2.0)、うっ血肝をきたすほどの右心不全を認めることから平均右房圧は上昇〈10〜15)、肺炎と左心不全を来していることから平均肺動脈圧は上昇(25)、肺動脈楔入圧は上昇(20)していると考える。全てを満たす選択肢はeである。

正答率:94%

テーマ:急性心不全の心カテーテル所見

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