113B38

75歳の男性。胃癌の手術後に在宅療養を行っている。3年前に胃癌で胃全摘術を受けた。1年前に腹膜播腫、肺および肝転移を診断されたが、抗癌化学療法は選択しなかった。訪問診療で経過は安定していたが、2週間前から食欲不振が出現し、在宅で1日1,700mLの維持輸液が開始された。その後徐々に床上で過ごすことが多くなり、昨日から呼吸困難を訴えるようになった。排尿は1日4、5回で、1回尿量100mL程度である。妻と長男夫婦との4人暮らしで、患者本人と家族は自宅での療養の継続を希望している。身長165cm、体重43kg。体温36.2℃。脈拍96/分、整。血圧118/76mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%(room air)。両側胸部にcoarse cracklesと軽度のwheezesを聴取する。上腹部に径3cmの腫瘤を触知するが圧痛はない。両下腿に著明な浮腫を認める。血液所見(2週間前):赤血球 308万、Hb 7.4g/dL、Ht 28%、白血球10,300、血小板18万。血液生化学所見(2週間前):総蛋白5.8g/dL、アルブミン2.3g/dL、尿素窒素26mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、血糖89mg/dL、Na 134mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 95mEq/L。

まず行うべきなのはどれか。

嚥下訓練
酸素投与
輸液の減量
緊急血液透析
緩和ケア病棟の紹介

解答: c

113B38の解説

2週間前から在宅で1日1,700mLの維持輸液を実施されていた高齢男性。両側胸部にcoarse cracklesと軽度のwheezesを聴取し、かつ両下腿に著明な浮腫を認めている。排尿は1日4、5回で、1回尿量100mL程度であるとのことで、(不感蒸泄や便中の水分など細かいことを考えないこととすれば)差し引き1リットル強の水分が日々蓄積されていたと考えられる。Na 134mEq/Lと希釈もありそうだ。過剰輸液による体内の水分貯留をきたし、肺水腫や浮腫をみている状況が考えやすい。
a 嚥下訓練と体内の水分貯留とは全く関係がない。
b SpO2は96%と保たれており、酸素投与は必要ない。
c 正しい。まずは輸液を減量する必要がある。
d 尿素窒素やクレアチニン、カリウムの値からは緊急血液透析の適応とは考えにくい。
e 医原性の過剰輸液が現時点の問題であるため、緩和ケア病棟の紹介は的はずれな選択肢である。

正答率:68%

テーマ:輸液による肺水腫にまず行うべき対応

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